鎌倉時代の”雅”の音色蘇る 陽明文庫の「笙」を補修

 陽明文庫(京都市右京区)が所蔵する雅楽の管楽器「笙(しょう)」のうち、鎌倉時代の「菊丸」が分解・補修され、約700年前の音色を取り戻した。制作年は1277年と判明し、演奏できる笙としては国内最古。東京大史料編纂所の研究チームが笙の第一人者、岩波滋・元宮内庁式部職楽部主席楽長の協力で笙5管を調査した。このうち「菊丸」を分解すると、17本ある竹の1本に「菩提山」などの文字が刻まれていた。さらに赤外線撮影した写真などから「貞俊」「行年三十九」などの文字が判読できた。菩提山は奈良市菩提山町にある正暦寺の山号。貞俊は1238年生まれの笙制作の名人で、39歳の1277年、正暦寺の工房で「菊丸」を制作したことが確認された。
 このほか、室町時代の作と推定される笙や「貞享二年」(1685年)の銘がある笙「雲龍」も補修され、演奏できるようになった。11月17日に京都市中京区の立命館朱雀キャンパスで行われる陽明文庫講座では、岩波さんがこれらの笙を演奏する。陽明文庫は藤原道長から続く五摂家の一つ、近衛家の宝物を所蔵する。