今こそ根本的に中国依存型構造の見直しを
「対話探る日本」と「強硬姿勢崩さぬ中国」との間で日中対立は長期化する見通しとなった。そこでこの機会に、敢えて提言したい。日本は根本的に中国との関係を見直すべきなのではないか。具体的には官民合わせた中国依存型の経済体制の見直し、およびそこからの脱却だ。
中国の今回の抗日施策で象徴的なのが、観光業や水産業への攻撃だ。中国側が真っ先に打ち出したのが日本への事実上の渡航禁止、次いで日本産水産物の輸入禁止だ。中国側は、日本にダメージを与える効果的なポイントを熟知しているわけだ。日中関係がどれだけ順調であっても、中国の態勢が変わらない限り、いつ何時、同国とのビジネスでは不測のトラブル、いわゆる”チャイナリスク”がつきまとうことは避けられない。
だからこそ、このリスクをできるだけ小さくしようとするなら、同国とのビジネスを野放図に大きくしては、全社の経営そのものを危うくすることを、”肝に銘じて”置かなければならないのだ。
日本が観光立国を目指し、インバウンド消費拡大に軸足を置き、グローバルに観光・旅行者誘致に様々な施策を講じることに異存はない。その半面、全国の人気観光地が中国人旅行者を筆頭にオーバーツーリズムに頭を抱えていることも事実だ。また、福島第1原発処理水の海洋への放出を巡り、IAEAの安全の”お墨付き”があっても中国側は全く耳を貸さず、そして日本産水産物の全面輸入禁止に動いたのが中国だった。この際、ホタテなどの海産物の輸出先で圧倒的な比重を占めていたのが中国で、全国の漁業者、取扱企業含めて大打撃を受け、加工基地を含めた新たな販路開拓に取り組み、部分的に一定の成果を挙げたはずだ。この努力を地道に、着実に進めるべきだ。
次世代の日中関係を見据えるなら、これまでの対中国とのあり方や姿勢を、そのまま若い世代に押し付けてはいけないのではないか?これまでは中国共産党と、自民党を軸とする議員団が構築してきた関係だったが、日本の政界も自民党の凋落から支持層が多角化。戦争を知らない世代が全人口の大半になっても、いつまでも遥か昔に決着したはずの戦争責任について”謝罪”し続ける日本の政治姿勢に疑問符をつけ、うんざりしている若い世代は多い。
産業界にとって中国との関係は重要なものだ。したがって、決して中国から即刻撤退せよというのではない。要は中国とは一定の距離を取りつつ、中国の依存率を、政治・外交状況がどのように変化しようとも、3〜5年かけて現行の3分の1程度まで引き下げるべきだと言いたい。そのためには、グローバル・サウスの新たなサプライチェーンの構築や市場・販路開拓が求められることはいうまでもない。