耕作放棄地の拡大防止へ農地集積バンク始動
小さな農地を借り上げて大規模生産者にまとめて貸し出す農地中間管理機構(農地集積バンク)の事業が全国で動き始めた。高齢化や後継者不足で耕作放棄地が広がるなど課題を抱える農業を成長産業に変革させるため、貸し借りを仲介し経営効率を高めるのが狙いだ。担い手による農地利用を現在の5割から8割に引き上げようと意欲的だ。
山口県萩市で4月に集落内の農家12戸が農事組合法人「日の出」を設立。離農した人や転居した人らに農地提供を呼び掛けて計16㌶を集め、集積バンクに貸し出された。これを「日の出」がまとめて借りている。
また、4月に借り手の募集を始めた兵庫県では、企業や大規模農家などから応募が殺到。1カ月の募集期間で114事業体から農地を借りたいとの要望が寄せられた。賃借を希望する面積は計4300㌶。同県が10年間で仲介すると定めた目標の2割がすでに集った計算だ。6月末にまず5件、計約39㌶の貸し付けを実施した。
耕作放棄地は農家の高齢化に伴って急拡大。全国の農業従事者の6割超は65歳以上。1975年に13.1万㌶だった放棄地は、2010年には3倍を超える39.6万㌶に拡大した。滋賀県の面積に相当する広さだ。こうした状況にあっても、他人に貸すのは嫌、売るのはもっと嫌というのが農地所有者=農家の本音。そこで、登場したのがこの農地集積バンクだが、まずは思惑通りの滑り出しといえそうだ。