会津冨士加工(福島県会津若松市)社長 松永 茂さん(61)
農業とは無縁の半導体メーカーが、常識破りの野菜作りに取り組み、腎臓病の人も安心して食べられる、カリウムを80%以上もカットした「低カリウムレタス」の開発に成功した。この会社、本業が不振で従業員の大幅なリストラを迫られる、会社存亡の窮地に、半導体工場を野菜工場に転換する決断をした。それが会津冨士加工の社長、松永茂さんだ。
しかし、通常の野菜工場ではない。農業のプロからみれば矛盾だらけの野菜作りだった。植物の三大要素の一つ、カリウムを抑えたレタスなど農家の立場からすれば本来あり得ないことだ。腎臓の病気を抱える人、透析患者ら需要は確かにあるものの、誰もそんな野菜の開発に成功していなかった。そこで通常、カリウムを多く含む生野菜を控えなければならない人でも、普通に安心して、笑顔で食べられる低カリウム野菜の量産化に取り組んだのだ。開発には半導体メーカーならではの、様々なノウハウが生かされた。
開発されたのはレタスが1個480円。でも売り切れるほどの人気商品。無農薬で2週間経ってもシャキシャキの鮮度を保ち、苦味もないという。
レタスに次いで、まもなく販売開始されるのがメロンだ。何年ぶりかでメロンを食べたという透析患者の笑顔を見ながら、早くも次の低カリウム野菜の開発目標を指示する松永さん。いまトマト、イチゴの開発に取り組んでおり、早晩、生鮮スーパーに並ぶことだろう。