「開発最前線」カテゴリーアーカイブ

植物と真菌類が根で共生する構造解明 京大大学院など

植物と真菌類が根で共生する構造解明  京大大学院など

京都大学大学院人間・環境学研究科の東樹宏和助教らの研究グループは、植物とキノコやカビなどの真菌類が根で共生する構造を解明した。特定の植物種としか共生しないものや、解析した植物種の大半と共生する真菌類があったという。今後、真菌種の役割を評価する技術を開発し、生物種同士の複雑なネットワーク構造を調べる手掛かりにするのが狙い。

東樹助教らは、生物名をDNAに基づいて特定する手法「DNAバーコーディング」を用いて、植物間で真菌類が共有されているか調べた。こうした複雑な関係性を解明すると農地での植物種を育成する際、共生ネットワークをどのように構築しているかを効率的に解明できるとみている。

今回の研究はブラジルのサンパウロ大学、デンマークのオーフス大学、米カリフォルニア大学などと共同で実施。成果は英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。

ヨーグルトから乳酸菌を抽出 東京工科大が成功

ヨーグルトから乳酸菌を抽出  東京工科大が成功

東京工科大応用生物学部の西野智彦准教授らは、ヨーグルトの塊から乳酸菌を生きたまま分けることに成功した。原料の脱脂粉乳由来のカゼインを密度勾配遠心分離法で除き、条件を調整し、菌をを100%回収できた。これにより実際のヨーグルト中の乳酸菌による特性研究の進展などが見込まれる。

乳酸菌は研究室の培地で培養して研究するのが一般的。しかし、市販ヨーグルトは牛乳の脱脂粉乳を原料に乳酸菌で発酵させてつくられる。ただ、今回は密度勾配をつくる試薬を活用した遠心分離で密度の低いカゼインを除き、密度の高い乳酸菌を取り出した。

グレープフルーツが体重増を抑制 米カリフォルニア大

グレープフルーツが体重増を抑制 米カリフォルニア大

米カリフォルニア大学バークレイ校の研究者らは、グレープフルーツジュースには体重増加を抑え、血糖値を下げる効果があるという論文を発表した。研究グループは12匹のマウスを、2つのグループに分け高脂肪食を与えながら、一方にグレープフルーツを、もう一方には水を飲ませ、体重や血液の変化を調べた。100日後に比べると、グレープフルーツジュースのグループは体重増加が18%低く、空腹時血糖値も13%低かった。ジュースの含まれる「ナリンギ」という成分に血糖値を下げる効果があることは確認できた。

トマトの糖度、近赤外線照射で測定 シンフォニア

トマトの糖度、近赤外線照射で測定  シンフォニア

シンフォニアテクノロジーはトマトの糖度を、非接触で測定する装置を開発した装置内で近赤外線を照射し、透過率から甘さを測る。栽培農家の経験にたよりことが多かった甘さの判定を機械化し、信頼性を高める。同社は近くハウス内の温湿度などの管理を自動化する機器を海外展開する方針。

「ひまわり8号」活用し農作物への自然災害防ぐ

「ひまわり8号」活用し農作物への自然災害防ぐ

農林水産省は内閣府や気象庁と共同で2015年度から、高精度の気象情報に基づく栽培管理支援や気象災害回避システムの開発に取り組む。HⅡAロケットで打ち上げられた静止気象衛星「ひまわり8号」では、1㌔㍍四方から500㍍四方の精密画像提供が可能になるほか、30分に1回だった画像提供頻度を最短で2分半にできるなど情報精度が飛躍的に高まる。この能力を生かし台風や大雪、竜巻などへの対策を万全にし、被害を最小限に食い止める。

15~17年度をメドに、メッシュ化した気象情報や気象災害対策情報を全国に配信するシステムの試作品を開発。19年度までに数週間先までの気象情報と対策情報を継ぎ目なく提供できるようにし、各地域や作物品種に対応した高温障害と冷害の予測技術、気象対応型栽培管理技術を開発する。

埼玉大 野菜や果物を超音波センサーで”健康診断”

埼玉大  野菜や果物を超音波センサーで”健康診断”

埼玉大学の蔭山健介教授らは、栽培するトマトやアセロラなどの野菜や果物の状態を正確に把握できる技術を開発した。茎の中で空気の粒が生まれるのを小さな超音波センサーでとらえ、与える水や肥料の量を精密に調節する。ミニトマトの水耕栽培実験では肥料の量を半分以下にできた。3年後の実用化を目指す。

エノキタケ由来の不凍多糖量産化に成功 カネカと関大

エノキタケ由来の不凍多糖量産化に成功  カネカと関大

カネカと関西大学は10月2日、風味を損なわずに冷凍保存ができる成分「不凍多糖」をエノキタケから抽出し、世界で初めて大量生産することに成功したと発表した。不凍多糖を添加すれば、高熱で調理した後に冷凍するエビフライやから揚げの味と食感を、解凍後も保つことができるという。10月中旬からサンプル出荷を始める。カネカでは5年後には不凍素材製品群で10億円の売り上げを目指す。

カネカは、関西大学化学生命工学部の河原秀久教授、エノキタケメーカーの一栄(長野市)、抽出装置を生産する富士ハイテック(長野市)と2010年8月から共同開発してきた。

神鋼環境 ミドリムシ量産化に成功 28年度に食品で始動

 

 

 

 

神鋼環境 ミドリムシ量産化に成功 28年度に食品で始動

神戸製鋼所のコ会社で環境装置大手の神鋼環境ソリューション(神戸市中央区)が本格的に始める「ユーグレナ(ミドリムシ)」の量産化に注目が集まっている。ユーグレナは、栄養素や油脂分を大量に含む単細胞生物。用途は食料品からジェット燃料までと幅広く、安定生産が実現すれば、ユーグレナを使った商品の開発が一気に進むことが期待されている。

神戸環境ソリューションが量産化するユーグレナは筑波大学と共同で発見した。バイオ燃料として有望と考えられてきた、他社が研究する「ユーグレナ・グラリシスZ株」と比較し、増殖し速度が重量ベースで2倍以上あり、生産性に優れているのが大きな特徴。

神戸環境ソリューションでは平成27年度に10立方㍍の大型培養槽で生産し、28年度にも食品の原料として販売、30年度に化粧品、32年度以降にジェット燃料として実用化する計画だ。

ナスのゲノム 世界で初めて解読 農研機構など

ナスのゲノム 世界で初めて解読  農研機構など

農業・食品産業技術総合研究機構はかずさDNA研究所(千葉県木更津市)と共同で、重要な野菜の一つであるナスのゲノムを世界で初めて解読した。784万2000の遺伝子の存在を明らかにするとともに、病害抵抗性や食品の機能性に関わる多数の遺伝子を見い出した。これらの遺伝子の情報を利用することで、ナス新品種開発の加速が期待できるという。

ナスは奈良時代から国内で栽培されており、近代的な品種改良で育成されたF1品種のほか、日本各地で様々な特徴を持つ地方在来品種が栽培されている。

病気や塩害に強いイネの新遺伝子発見 愛媛大など

 

 

 

 

 

 

病気や塩害に強いイネの新遺伝子発見  愛媛大など

愛媛大学と農業生物資源研究所の共同研究グループは、イネから病原菌や塩害、乾燥に強く、光合成の能力も増す遺伝子を発見した。1つでこれだけ多くの遺伝子の働きを高める遺伝子は、これまで知られていないという。

同研究グループは、様々な遺伝子の働きを制御するHAP2たんぱく質の遺伝子(HAP2 E)を取り出した。HAP2遺伝子の働きを強めたイネをつくり、既存のそれぞれ優れた特性を持つ品種「あそみのり」「戦捷」「日本晴」などと比較し、病気のかかりにくさや、塩害や乾燥に対する強さなどを調べた。病気に強く、塩害が起きている地域や乾燥地帯で育つ新品種の開発に役立つと期待される。