『福祉先進都市・大阪』具現化に向けて

「未来(あす)の福祉を考える会」は、次代の社会福祉を支え、地域の活性化・再生を促す施策を提言します。
提 言

Ⅰ. 地域完結型の医療・介護・保育連携の「ケア・さぽーと きずな」の構築
Ⅱ.「社会福祉人材・連絡協議会」の設立
Ⅲ. 人手不足解消には外国人材育成・確保が不可欠
Ⅳ. 新ビジネスを模索するITベンチャーの拠点づくり-若年世代に夢を
Ⅴ. 訪問介護ステーション機能の強化・拡大-求められるヘルパー確保がカギ
Ⅵ. 商店街の振興・活性化策の視点-商店街のあり方・人の流れを変える

<付記>
地域発福祉のあり方

Ⅰ. 基本的な考え方-地域を元気にし、新しい刺激を与える仕組みをつくる
Ⅱ. 活況に潜む“影”、一過性のブームでは地域再生は叶わない

具体案
提言主旨

Ⅰ. 地域完結型の医療・介護・保育連携の「ケア・さぽーと きずな」の構築
大阪府下および大阪市内の各地域に、地域完結型の医療・介護・保育連携の人材育成・登録・派遣の「ケア・さぽーと きずな」(仮称)システムを構築します。これは政府が掲げる「働き方改革」により、これらの分野で必要となる労働力(働き手)を地域ごとに確保し、運営を目指すものです。

Ⅱ.「社会福祉人材・連絡協議会」の設立
Ⅰ.の方策を実施、推進していくためには、何よりも地域ごとに安定的かつ無理のない仕組みをつくらなければなりません。そこで自治体と、地域の自治会、社会福祉法人、医療法人、学校法人などその地域の事情に合わせた団体・法人で構成する「社会福祉人材・連絡協議会」(仮称)を設立し、このシステム運営の中核組織とします。

Ⅲ. 人手不足解消には外国人材育成・確保が不可欠
介護・福祉分野における慢性的な人手不足を解消するには、外国人材育成・確保の施策は欠かせません。このため、政府に外国人福祉人材育成・確保に向けて、想定相手国との政府間レベルでの協力要請などの環境づくり、海外現地での介護教育・施設の設置へ向けた積極的活動費の助成、既存の資格取得のための条件緩和・拡充による補助・助成金の拡大(担い手を目指す人への動機付け、ハードルを下げる)を要望します。

Ⅳ. 新ビジネスを模索するITベンチャーの拠点づくり-若年世代に夢を
若年世代の東京圏への流出に歯止めをかけるには、大阪圏に若年世代に夢を与える研究開発・事業化ラボ群が必要です。社会福祉分野に限定する必要はありませんが、地域と密着、連携した形で進められるのはやはり、社会福祉分野でいま求められている様々なニーズをITで具体的な形にしていくことでしょう。
全国統一のWi-Fi網が整備された際、必要になる様々なコンテンツ制作の領域は、彼らに魅力的な就業の場を与えることになるはずです。

Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ.Ⅳを円滑かつ遅滞なく進めるために、国に大阪府を「社会福祉特区」に申請します。

Ⅴ. 訪問介護ステーション機能の強化・拡大-求められるヘルパー確保がカギ
2025年を展望すると、施設介護には限界があり、在宅介護に軸足を置いたケア体制が主流にならざるを得ません。そこで「訪問介護ステーション」を核にした、地域ごとの安定的な介護体制整備が必要になります。ここで求められるのがヘルパーの絶対数の確保です。有資格者はもとより、想定される就業地・就業条件など具体的に示し、育成・資格取得を促す方策が必要です。 

Ⅵ. 商店街の振興・活性化の視点-商店街のあり方・人の流れを変える
商店街の振興・活性化は、各地域の年齢別人口構成により、それぞれの地域の事情に合った空き店舗スペースの活用策が求められます。その際、商店街のロケーションやその地域に不可欠なニーズを把握し、店舗の存続にこだわらず、基本は大胆に「商店街のあり方を変える」・「人の流れを変える」を考えることから始まります。これに伴い、商店街の空きスペースに、上記の訪問介護ステーションや、健康や日々の生活上の様々な相談に応じる「地域・生活支援センター」(仮称)を設置するケースも出てくるでしょう。また、子ども・学童・高齢者らが気軽に集える、ふれあい喫茶コーナーやイベントスペースも設けられるようになるはずです。

<付記>
地域発福祉のあり方

Ⅰ. 基本的な考え方-地域を元気にし、新しい刺激を与える仕組みをつくる
 地域を元気にしなければ、住民の暮らしと街の再生はあり得ません。税収の少ない地域や、特筆されるような観光資源に恵まれない地域は、一時的な助成金・補助金支給を繰り返しても、継続的かつ安定的な住民の暮らしと街の活性化・再生にはつながりません。
 高齢者はじめ若年世代を含めた地域住民の生活に根差した部分で、活性化を促す仕組みをつくる必要があります。加速する少子高齢社会の中で、とりわけ生活基盤の中で求められるものは医療・介護・保育であり、これらの業務にいかに携わり、あるいは従事していくのかを考えること、そして暮らしに直結した、地域に必要な新しい仕組みを導入することこそが、地域住民に好刺激を与えることになります。

Ⅱ. 活況に潜む“影”、一過性のブームでは地域再生は叶わない
インバウンド需要拡大に湧き、潤う関連施設が増えることは歓迎すべきことです。しかし、訪日外国人旅行者の消費が大阪府下、大阪市内全域にくまなく及んでいるかといえば決してそうではありません。いや、直接的な恩恵を受けている地域は全体からいえば一部に過ぎません。多くの地域は直接的な恩恵を受けないまま取り残されているのです。
2025年の万博誘致が叶えば、夢洲の開発は進み、大きな経済効果が期待できます。このことは日本経済、とりわけ関西・大阪にとっては大変歓迎すべきことです。しかし、これによって潤うのもやはり、関連産業や施設・地域に過ぎません。また、ギャンブル依存症や治安対策など課題を克服しても、統合型リゾート(IR)を誘致して、その豊かさを訪日外国人旅行者とともに実感できるのは、家計上、ゆとりのある人たちだけという可能性も決して少なくありません。
したがって、インバウンド需要への対応はじめ、関西・大阪への万博誘致や統合型リゾートの大阪誘致もその大きな経済効果などが期待されるだけに、決して否定するものではありませんが、地域を現状のまま放置すれば、それが実現しても一過性のブームに終わってしまい、地域への活性化・再生に即、結びつくものではないという側面は押さえておかなければいけないということです。