農村歌舞伎に復活の輪 地域まとめる役割に期待

農村歌舞伎に復活の輪地域まとめる役割に期待

  江戸時代から、レジャーのまだ少なかった昭和30年代ごろまで、日本各地で盛んだった農村歌舞伎(地芝居)が近年、脚光を浴びている。かつて人気を集めた木造の舞台は過疎化が進む山村などでは、世代を超えた新たなコミュニケーションの場として支持を集めている。舞台の復活や大規模修復に乗り出す地域も相次ぎ、全国的な交流も活発になっているという。 

    八ヶ岳を望む小高い丘に建つ長野県茅野市の「槻木舞台」。2013年10月に、半世紀ぶりの歌舞伎公演を開いた。すると普段は静かな山村に700人以上の人が集まったという。ここは幕末の文久2年(1862年)建造と伝わる舞台だ。本格的な修復に着手したのは昨年。終戦後までの様子を知る人が健在のうちに伝統の舞台を生き返らせたい。そんな思いで、同市の文化施設運営を手掛けるNPO法人が、舞台を所有する同市泉野槻木地区に公演復活を持ちかけたのがきっかけだった。

    修復に要する資金を巡り、当然反対意見もあったが、昔のにぎわいを思い出し、復活へと意見がまとまった。今の子供たちの目を、地元の文化財に向けさせたいとの思いもあった。同市内には他に3つの木造舞台があり、その整備や保存についての検討も始まっている。

    農村歌舞伎が盛んな地域でも、使われていない舞台を修復して、新たに使用する事例がある。3カ所の農村舞台を使用して10以上の歌舞伎劇団が活動する埼玉県小鹿野町。築130年とされる羽黒神社の舞台「舞殿」が昨年修復され、10年ぶりの歌舞伎公演を開いた。同町教育委員会によると、現在全国で活動中の農村歌舞伎は200以上。調査を始めた1991年には30余りだったといい、近年とくに復活の動きが活発-としている。東日本大震災以降、地域コミュニティーをまとめる機能の一つとして、郷土芸能への注目が集まっていることの証(あかし)とみられる。