鈴木憲和農水水産相が就任早々、コメの増産路線を軌道修正するかのような発言を繰り返している。
石破前首相が関係閣僚会議で、戦後のコメ農政を転換すると決断。事実上の減反政策を見直し、増産路線へと舵を切ったのが8月だ。これで、多くの国民は今後、高市内閣が物価高対策を打ってくれれば、安心して食べられる価格へと落ち着いていくと期待し、歓迎したはずだ。そんな中、鈴木農水相が期待を裏切る発言をするのは理解しがたい。
高市政権の最重要課題は物価高対策だが、銘柄米は5キロ約4,500円だ。消費者目線でいえば、もう少し低めが望みなはず。それなのに増産路線の修正発言で、価格の高止まりを放置するのは明らかに矛盾するのではないか。
この背景には、JAや”農水族議員”の主導のもと減反政策に終始し、失敗した旧体制派のかなり強烈な反撃があるのではないか。彼らは生産調整で高価格を維持する形の農政こそが正解とばかりに推進してきた。だが今日、完全に”失敗の烙印”を押された戦後のコメ農政関係者らの路線を継承する人たちの必死の抵抗、反撃が今も厳然としてあるのだろう。
とはいえ、同じ自民党内閣なのにトップが変わったからといっても、前政権がわずか2ヶ月前に約束したことを安易に一方的に変更することは、有権者としてはとても容認できるものではない。
政府は、価格の適正水準での安定を求める一般生活者、有権者の意に反して、またも乱高下する状況に戻したいのか?この背景や経緯を、農水相としてきちんと消費者に説明を尽くさなければ、高市首相も早々に同氏の更迭をも考えるべきだろう。でなければ、この政権の政策決定事項はとても信用できない。