私説 小倉百人一首 No.13 陽成院

陽成院
※第57代天皇

筑波嶺のみねより落つるみなの川
       恋ぞつもりて淵となりぬる

【歌の背景】光孝天皇の第一皇女綏子内親王に宛てて詠んだ恋の歌。光孝天皇は55歳の高齢で陽成天皇に代わった人。綏子内親王はのち陽成妃になっているから、この恋は成就している。

【歌 意】古来、男が歌いかけ女が答えられなかった時は、女が男の一夜妻にならなければならなかったという歌垣の山、筑波山。その筑波山の峰から落ちる男女川は、その水が積もり積もって深い淵となってしまうが、そのように私のあなたへの激しい恋の思いも積もり積もって深い淵のようなものになってしまったことだ。

【作者のプロフィル】第57代の天皇。名は貞明。清和天皇の第一皇子。貞観10年(868)12月生まれ。生母は藤原長良のむすめ高子すなわち二条の后で、藤原基経の妹。元慶元年、9歳で即位。外戚の基経が摂政となって政治を執った。病気のため同8年、光孝天皇に譲位し、陽成院に住む。太上天皇の尊号を贈られた。基経をはじめ藤原総領家に疎まれ8年の在位だったが、結局、退位後60数年を生き、82歳という前例のない長寿を生きた。