三菱ケミカルホールディングスは中国の農協組織と中国全土で野菜栽培システム「植物工場」の販売に乗り出す。同社傘下の三菱樹脂アグリドリーム(東京都中央区)が、江蘇省政府が直轄する「江蘇省チャイナコープ」の子会社と合弁で、5月下旬に無農薬野菜を自動栽培するシステムの販売会社を設立して営業を始める。
すでに河北省や山東省、四川省、広東省などから打診があり、2017年までに沿岸部、内陸部合わせて約15省の50カ所で植物工場の販売を見込む。中国で日本企業が商業ベースで植物工場事業を大規模展開するのは初めて。
これまで三菱樹脂アグリドリームと江蘇省チャイナコープは無錫市で植物工場の実証実験をし、無農薬野菜を育てて高級スーパーやデパートで試験販売。市価の5倍の価格でも売り切れるなど好評だった。消費者の安全な農作物への関心が予想以上に高いと判断し事業化に踏み切った。
農業法人をまとめるチャイナコープは中国各地にあり、中でも江蘇省の組織は売上高約5兆円と巨大で影響力を持つ。各省のチャイナコープ網を活用し中国全土の農業法人に販売する。当面メドとする15省で50カ所の植物工場の合計の野菜生産能力は年間約5000㌧。中国の無農薬野菜など高級野菜市場の1割弱に相当する。
三菱ケミカルの植物工場はコンテナ式装置で苗を育て、ビニールハウスに苗を移して太陽光と養液で水耕栽培する。コンピューター管理が特徴で、温度や湿度、空気の流れを計画し、水や養液、肥料を流して自動栽培する。害虫が入らない高機能フィルムを使うことで野菜を無農薬で育てられる。ホウレンソウだと露地栽培の約5倍の年20回収穫できる。
工場システム一式で3000平方㍍当たり販売価格は約1億円。農業フィルムなど工場建設に必要な部材を現地調達して、日本国内より数割コストを抑える。