総務省の有識者検討会が地方税制に関する報告書をまとめた。税収の多い東京と、税収不足に悩む地方の格差が広がっているとし、国に対策を講じるよう求めている。
東京都の税収はどれくらいで、他の46道府県とどれくらい違うのか?2023年度の地方税全体に占める都の税収は、実に17.6%に上っている。税目別でみると、企業に課税する地方法人税では22.5%、土地の固定資産税では25.1%がそれぞれ都に入っている。
地方法人税は、地方に支店があっても、本社のある自治体に多くが入る仕組みとなっている。こうしてみると、東京に多く税収が集まるのは、一向に歯止めがかからない「東京一極集中」の進行という構造的な問題でもあるのだ。
総務省によると、人口1人あたりの地方税収額を比べると、都は最も少ない長崎県の2.3倍に上る。都が独自の施策を行う場合、住民1人あたり年28万円の予算を充てられるが、他の道府県では平均8万円にとどまるという。
こんな潤沢な税源をベースに、都の行政サービスは目を見張る物がある。子育て支援では、18歳以下に1人あたり月5,000円を給付している。今夏には水道の基本料金を4カ月間、無償とした。
自治体間の税源の不均衡を是正する措置としては交付税がある。だが、交付税措置だけでは、行政サービスを維持するのが難しくなっている自治体もある。算定方法を見直し、小規模自治体にも手厚い措置を講じる必要があろう。
地方が疲弊し続ける悪循環を断ち、国全体の活力を維持するため、時代の変化に合わせ、税源の偏在を早急に改めるべく、税制のあり方を見直すことが求められている。
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今こそ根本的に中国依存型構造の見直しを
「対話探る日本」と「強硬姿勢崩さぬ中国」との間で日中対立は長期化する見通しとなった。そこでこの機会に、敢えて提言したい。日本は根本的に中国との関係を見直すべきなのではないか。具体的には官民合わせた中国依存型の経済体制の見直し、およびそこからの脱却だ。
中国の今回の抗日施策で象徴的なのが、観光業や水産業への攻撃だ。中国側が真っ先に打ち出したのが日本への事実上の渡航禁止、次いで日本産水産物の輸入禁止だ。中国側は、日本にダメージを与える効果的なポイントを熟知しているわけだ。日中関係がどれだけ順調であっても、中国の態勢が変わらない限り、いつ何時、同国とのビジネスでは不測のトラブル、いわゆる”チャイナリスク”がつきまとうことは避けられない。
だからこそ、このリスクをできるだけ小さくしようとするなら、同国とのビジネスを野放図に大きくしては、全社の経営そのものを危うくすることを、”肝に銘じて”置かなければならないのだ。
日本が観光立国を目指し、インバウンド消費拡大に軸足を置き、グローバルに観光・旅行者誘致に様々な施策を講じることに異存はない。その半面、全国の人気観光地が中国人旅行者を筆頭にオーバーツーリズムに頭を抱えていることも事実だ。また、福島第1原発処理水の海洋への放出を巡り、IAEAの安全の”お墨付き”があっても中国側は全く耳を貸さず、そして日本産水産物の全面輸入禁止に動いたのが中国だった。この際、ホタテなどの海産物の輸出先で圧倒的な比重を占めていたのが中国で、全国の漁業者、取扱企業含めて大打撃を受け、加工基地を含めた新たな販路開拓に取り組み、部分的に一定の成果を挙げたはずだ。この努力を地道に、着実に進めるべきだ。
次世代の日中関係を見据えるなら、これまでの対中国とのあり方や姿勢を、そのまま若い世代に押し付けてはいけないのではないか?これまでは中国共産党と、自民党を軸とする議員団が構築してきた関係だったが、日本の政界も自民党の凋落から支持層が多角化。戦争を知らない世代が全人口の大半になっても、いつまでも遥か昔に決着したはずの戦争責任について”謝罪”し続ける日本の政治姿勢に疑問符をつけ、うんざりしている若い世代は多い。
産業界にとって中国との関係は重要なものだ。したがって、決して中国から即刻撤退せよというのではない。要は中国とは一定の距離を取りつつ、中国の依存率を、政治・外交状況がどのように変化しようとも、3〜5年かけて現行の3分の1程度まで引き下げるべきだと言いたい。そのためには、グローバル・サウスの新たなサプライチェーンの構築や市場・販路開拓が求められることはいうまでもない。
?だらけの「副首都構想」目的が混在
自民党と日本維新の会が「副首都構想」の法案作成に向けた協議を始めた。両党は、2026年の通常国会で議員立法の成立を目指している。ただ、維新が掲げるこの副首都構想は様々な目的が混在していて、極めて分かりにくい。
維新が単独でまとめた素案は、副首都を「日本の経済成長を牽引する」都市と位置付けている。東京が被災した場合、省庁を一時的に移転する拠点とも表現している。
また、素案では副首都に指定した場合、国が国際会議場や交通網などのインフラ整備を支援するという。国の予算を使って大阪の都市基盤を強化できれば、との思惑も垣間見れる。そうであれば地元への利益誘導が露骨すぎる。
目的が①大規模災害によって、中央省庁などの機能が失われる事態に備えるため②東京以外の都市を整備し、東京への一極集中を是正するためーーなのか?また、副首都の指定を受けられる自治体を、東京23区のような特別区を設けた道府県に限定している点も?だ。
そもそも災害に備えることが目的であれば、首都直下型地震の懸念がある東京の代替地を、南海トラフ巨大地震の被害を受ける恐れがある大阪は候補地とはならないはずだ。
災害のリスクを分散するなら、省庁の移転先を大都市に限る必要はない。副首都とは別に検討すべき問題なのではないか?
日中緊張, 衆院議員定数削減など難題山積
自民党の高市内閣は今、物価高対策や衆院議員の定数削減の法案化や、突然降って湧いたような、首相の台湾答弁を巡る中国との問題など、国内外とも喫緊の難題山積で恐らく気を緩めるときがほとんどない状態が続いている。
働いて、働いて、働いて…覚悟はしていても、このうち中国との緊張関係は全く想定していなかったものだ。発端は、高市首相が国会で台湾有事に関する立憲民主党の議員の質問に対し、中国が台湾周辺を海上封鎖した場合、「存立危機事態になり得る」と答弁したことだった。存立危機事態は、日本が集団的自衛権の限定的な行使に踏み切る際の判断基準である。
これを受け事態は急変、矢継ぎ早に中国は激しい対日攻撃をエスカレートさせている。中国外務省は自国民に日本への渡航自粛を呼び掛け、教育省は”でっち上げ”の、日本の治安が不安定だという理由をつくり、日本への留学は慎重に検討するよう求めている。
事実を歪めた強硬な発言で相手国を動揺させ、自らに有利な状況をつくり出そうとするのは、中国の常套手段だ。具体的な根拠も示さず、たたみかけように日本を貶(おとし)めるような発言を繰り返す中国の姿勢はとても看過できない。
これに対し日本は、中国の一方的な対日非難を黙認せず、正当な抗議と辛抱強く誠実な説明の努力を続ける必要がある。あくまでも対話を通じ、冷静に解決策見出すしかない。日本は台湾の帰属に関する中国側の主張を尊重する。この点と、台湾周辺の武力紛争に関する日本の見解は、次元が異なる。
日本のこうした立場は、自民党を中心とする歴代内閣と同様、何ら変わらず一貫している。歴代首相は抽象的に表現するにとどめ、高市氏は歴代首相と差別化し、より具体的に説明、答弁したに過ぎない。不幸だったのは高市氏が過去、中国側が靖国参拝などで”保守タカ派”のレッテルを貼った人物だったことが災いしたのだ。
とはいえ、日中の今回の緊張関係と交流見合わせは簡単には溶けそうにない。中国が高く振り上げた拳(こぶし)は下ろせないからだ。したがって、異常事態の長期化は避けられないようだ。
もう一つ急がれるのが衆院議員定数削減問題だ。削減数、削減時期の実務者協議で11月中の法案提出へ詰めの議論の行方が注目されている。両党内では、選挙制度改革の検討を法案に盛り込む案も浮上している。今国会で法案の取りまとめができなければ自民・維新の連立政権合意書の精神が崩れるのではないか?との見方もあり、安易に先延ばしできないのだ。
斎藤知事を不起訴 最悪の先例 神戸地検
神戸地検は11月12日、昨年11月の兵庫県知事戦で選挙運動の対価をPR会社、メ゙ルチェ(兵庫県西宮市)に支払ったとして公職選挙法違反容疑で告発された斎藤元彦知事と、同社の女性代表について、いずれも嫌疑不十分で不起訴にした。
この案件、請け負った当事者が「斎藤氏側から広報全般を任され、運用戦略立案、コンテンツ企画などを責任を持って行った」とネットに投稿していた。本人が認識していたかどうかは別にして、十分”クロ”としか言いようがない。これでも違反にならない公選法とは何なの?と声を大にして言いたい。
神戸地検は「選挙運動の対価と言えない」と判断し、最悪の先例を作った。今後の様々な選挙でこの種の案件は続出すると思われる。これを不起訴にした”ツケ”は極めて大きい。今後、スレスレの案件が横行することになるのではないか。
公選法は、ネットの選挙運動で主体的に企画立案した業者や個人へ対価の支払いを買収、受け取りを被買収として禁じている。告発容疑は斎藤氏側が買収、PR会社代表が被買収。最大の焦点は、斎藤氏側から支払われた71万5,000円が選挙運動の対価にあたるかどうかだった。
衆院議員定数の削減 自・維に温度差
連立合意書をたてに、日本維新の会が「今国会で成立させるべき」と掲げた衆院議員の定数削減を巡り、自民党と日本維新の会との温度差が目立ち始めている。自民側は「法案の成立は難しい」とみて現実的な着地点を探るが、維新側はあくまでも「ここでやらないでいつやるのか」と、実現を求める姿勢を崩していない。
今国会での定数削減について、高市首相は11月7日の衆院予算委で「法案を提出する」と断言しつつ、国勢調査の結果が来年まとまることに触れ、「それらも見ながらどのように削減するか詰めましょう」とし、今国会中に詳細は決めない可能性に言及した。
鈴木幹事長も10日、「比例代表だけ削減するのか、小選挙区もか、いくつ減らすのかなど(各党に)様々な意見がある。今国会で決め切るのは難しい」と語っている。
維新の吉村代表は10日、「全会派の合意を得るのは簡単ではないというのはその通りだ」とし、自民側の主張に一定の理解を示した反面、定数削減は「改革のセンターピン」と位置付けているだけに、ここで腰砕けになれば連立入りを決断した執行部の求心力にも関わると、いぜん強気の姿勢を堅持している。
藤田共同代表は8日、テレビ番組で、法案が「理不尽に潰されたら(首相は衆院を)解散したらいい」と強調し、削減に否定的な野党をけん制している。
ただ、高市首相は「定数削減を争点に衆院を解散することは?」とその可能性を聞かれ、はっきりと否定的な見解を示している。
こうしてみると、自党の主張にこだわり、年内に双方の歩み寄りによる落としどころで”折り合い”が着かなければ、現在の温度差だけでなく最悪、連立離脱といったリスクをもはらんでいる。
”アーバンベア”の駆除へ国が体制整備を
クマに襲われる人身被害が、連日報じられるように各地で多発している。2025年度の出没件数は4〜9月の上半期だけで2万件を上回り、過去5年間で最多となっている。死者数もこれまでに13人と過去最悪だった2023年度の2倍を超えた。
2025年度は出没場所が山中や森の周辺だけではない。これまで本来、クマが居住している山中や森を下り、荒廃したかつての里山や、草が生い茂った耕作放棄地を超えて民家の玄関先はじめ役場、学校・保育園、住宅・商業地の人の生活圏で出没する、いわゆる”アーバンベア”が全体のおよそ7割を占める事態となっている。もはや、日常的なアーバンベアへの、喫緊の対策が求められる事態となっているのだ。
ここに至っては、政府は早急に住民の生活や安全を守るための総合的な対策を講じるべきだ。陸上自衛隊による後方支援はあるが、彼らは銃器を携行しているわけではない。警察庁は関係規則を改正し、警察官がライフル銃を使ってクマの駆除にあたることを認めた。
クマの駆除の中心をなしてきた全国各地の猟友会会員はいずれも高齢化が進み、根本的に人材が不足している。目先は、狩猟免許を持つ人を臨時に自治体職員として採用するなど、”ガバメントハンター”の確保を検討すべきだ。
これとともに、猟友会会員の日当の引き上げが必要だろう。日当は自治体によって異なるが、数千円のケースが多い。クマの相次ぐ出没で緊急出動が増えている現在、政府・自治体による手当の早急な引き上げが求められる。
衆院議員定数 維新の削減の根拠が不明確
自民党が政権維持に向け、首班指名選挙直前に日本維新の会との合意書で掲げた、衆議院議員の定数削減についての議論が11月4日、衆院で始まった。これは自民と維新の両党が連立政権の合意書を交わす直前、”唐突に”維新の強い要求を受けて合意書に盛り込まれたものだ。
しかし、この定数削減は限られた日数の限られて党だけで決めるべきものではなく、簡単ではない。そもそもなぜ衆院議員の定数を減らす必要があるのか。しかも、維新が求める比例選で削減幅1割の根拠が不明確なのだ。維新の主張はあまりにも説得力に欠けるものと言わざるをえない。
立憲民主党の野田代表は「削減の方向性には賛成だが、小選挙区と比例のバランスを考慮すべきではないか」と指摘する。全くそのとおりだ。
維新は「身を切る改革」を掲げ、かつて拠点の大阪で府議会の定数を大幅に削減した。2年前には大阪市議会の定数も減らした。これによって住民の支持を拡大した。この成功体験を国政にも持ち込みたいのだ。
では衆院の議員定数はそんなに多いのか?現在の定数465は、人口が7,000万人余だった第2次世界対戦直後の466と同水準だ。欧州の主要国と比べても、日本の国会議員数は人口比で比べれば少ない。
1票の格差是正のため、小選挙区の区割りが何度も見直され、地方選出の議員は減る一方となっている。それを安易に減らせば、有権者の声が国政に届きにくくなる。かと言って、小選挙区で敗れた候補が比例選で復活当選する仕組みに、違和感を覚える人も多いはずだ。今こそ、与野党の各党各派が協力して選挙のあり方を議論すべき時だ。
リニア中央新幹線 コスト倍増, 難題山積 開業見通せず
JR東海は、リニア中央新幹線の東京・品川ー名古屋間の工事費が、当初計画の約5.5兆円から倍増の11兆円に膨らむとの見通しを発表した。資材費の高騰や難工事への対応で費用がかさむ。すでに2021年に約7兆円へと修正しており、今回が2回目の見直しだ。
JR東海の丹羽俊介社長は、工事費の増加分は借り入れなどで対応するというが、運賃を引き上げる可能性にも言及している。同社長は、4年前にはまだ工事の難易度が見通しきれていなかったと説明するが、事業内容の精査に甘さはなかったのか?この種の工事は不確実な要素が多い。だが、コスト増が発生するたび、そのまま運賃に転嫁では利用者の理解は得られまい。
リニア中央新幹線は東京ー名古屋ー大阪の3大都市圏を結ぶ国の新たな大動脈として期待は大きいものの、開業時期は一向に見えてこない。品川ー名古屋間の2027年開業を目指して工事が始まったのは2014年末で、すでに10年余り経過している。
静岡県内を流れる大井川の水量が減少することへの懸念から、川勝平太前知事は計画に反対を続けた。このため、JR東海は2024年3月、2027年開業を断念した。知事は2024年5月に鈴木康友氏に代わったが、自然環境を巡る議論は続いている。そのため、工事開始に向けた認可は下りていない。
今回の工費は開業時期を2035年に仮置きして試算したものという。工期が延びれば費用は更に膨らむだろう。この難題をどう打開するのか?
リニアは次世代の輸送手段として期待は大きい。超電導の技術を用いて東京ー大阪間の438kmをわずか1時間強で結ぶ計画だ。名古屋までの所要時間は最速40分となる。経済効果は年6.5兆円が見込まれており、恩恵は大きい。