自公の少数与党政権が、「政治とカネ」の問題への対応を巡り、公明党が企業・団体献金の規制強化を求めたのに対し、自民党・高市総裁は”ゼロ回答”。これを受け公明党が離脱。首班指名選挙に向けて、自民党は連立相手を求めて模索。情勢は一気に混沌とした。
一連のこの動きの中で目立って、全く独自性を打ち出せなかった党がある。立憲民主党だ。議席数こそ持ってるが、自民党と同様、党内に右派から左派まで数グループがあり、党是や主要政策で他野党とも容易に連携しづらいことが判明した。これでは、党が持つ議席の数は全く生かされない。なら、打つ手は党内を割るしかないのではないか。そこから、やり直すべきだ。有権者が選択しやすいように。その責任があるのではないか。
そもそも立憲民主党が現在、野党第1党で、他野党を引き離した議席を保持しているのは、有権者が、決して同党の政策や党是をきちんと分かったうえでの結果ではない。政治とカネの問題でいわゆる”裏金”が指摘され、有権者に分かる、納得を得るような形で、自民党がいつまで経ってもきちんとした方針や処理を打ち出さないため、当初はそれを嫌気した、自民党を支持していた有権者が、本心は「取り敢えず野党第1党に投票しておこうかぐらいのことでしかないのだ。
したがって、大変失礼な言い方になるが、実は立憲民主党の実力ではないといえよう。野田代表も内心そう思っているのではないのか?首班指名選挙に向けて野党一本化に向けて何一つリーダーシップも、野党第1党が果たすべき主導的役割を果たしていない。表紙を変えるだけで、何も変わらない自民党の”再生”など全くおぼつかないが、これに先駆けて今こそ、立憲民主党が胸を張って、堂々と現実的な主要政策派と理想を求める派くらいに早急に分党してはどうか。
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耐えた公明 区切りの連立離脱 自民の認識の甘さに遠因
公明党が自民党との26年間にわたる閣外協力・連立政権に区切りをつけ、離脱した。これまで通り、表紙を変えるだけの総裁選を勝ち抜いた高市新総裁体制は、自民党とともに衆参両院選挙で惨敗した公明党が総括して、抱いていた現状認識とはかけ離れていた。それが党内主要人事の”論功行賞”を反映した麻生派偏重と、選挙を経て”みそぎ”は終わったとばかりに、プラス元裏金議員の起用に現れている。公明党の現状認識とは大きなズレがある。いや、かけ離れていたといっていい。
そんな自民党に、公明党はこれまで企業・団体献金の規制強化を求めてきたが、高市氏は公明党の斉藤代表に”ゼロ回答”。唐突に初めて聞いたとばかりに表現、そのうえ公明党に対し26年間の連携に、ひとことの感謝の言葉を発することなく、「一方的に連立離脱を告げられた」とも会見で言明した。
公明党の連立離脱を招いたのは、明らかに自民党側の対応がまずく、間違っていたからだろう。高市氏は総裁就任後まず連立政権パートナーの公明党ではなく、国民民主党代表の玉木氏との会談を優先した。これが離脱への引き金の一つとなった。菅政権、岸田政権時代は公明とのパイプ役が機能していた、しかし今回の高市体制では、麻生氏は公明党嫌いで、そのパイプ役を担える人がいなかったともいわれる。そのため大枠の現状認識さえ共有できていなかった。この結果、次回選挙で自民党は公明党の選挙協力・組織票で辛うじて議席を確保していた30〜40議席を失うことになるといわれる。
政治とカネの問題を巡る裏金スキャンダルは、自民党の”前時代的体質”を余す所なくあぶり出し、その対応・処理を根本的に誤った。その結果、衆参両院ともかつてない有権者の”自民党離れ”を生み出した。自民党員の減少も加速している。
この状況を受け、地方における自民党員を中心に、もはや”解党的出直し”の必要性を訴えるが、この意識は国会議員の全体の意識にはなっていない。口では「政権基盤維持が難しくなった」と言いながら、迎えた多党化時代、連立政権相手を増やせば、何とか乗り切れるぐらいにしか判断していなかったのだろう。
自民 公明との結束揺らぐ”政治とカネ”で折り合わず
自民党の高市早苗総裁は10月7日、国会内で公明党の斉藤鉄夫代表と会談した。連立政権の継続に向けた政策協議は、公明党が”政治とカネ”の問題に関する懸念を示し、合意に至らなかった。公明党は”連立離脱も辞さない”姿勢で、引き続き協議するという。
斉藤氏は高市氏に①政治とカネの問題②靖国神社参拝を含む歴史認識③過度な外国人排斥ーーの3項目について懸念を伝えていた。高市総裁誕生の背景には、政治とカネに絡む”裏金”議員の支援も強かったと言われるだけに、公明党の懸念は当然とも言える。公明党は企業・団体献金について、政治資金収支報告書への不記載問題に関し、全容解明を求めている。ただ、これに対応するのは自民党にとって決して容易ではない。
衆参両院で自公政権が少数与党のいま、その基盤である公明党の納得が得られなければ、安定した政権運営のために、より連立拡大を目指すなどとは言っていられない。”解党的出直し”は全くのスローガンにすぎず、自民党自体は何も変わっていないのだから。
政治とカネについての自民党の対応は、衆参両院選挙でも明らかなように、これまで自民党を支持してきた有権者の多くが、「まだまだ不十分」「このままウヤムヤにしてしまうつもりか?」の怒りが収まっていない。
これを受け、公明党がチェック、確認せずに容認し、連立政権を継続すれば、公明党も同罪になってしまう。その瀬戸際だ。公党として十分な納得が得られなければ、基盤である創価学会の支持も得られない。中途半端に妥協しないことだ。
高市 自民執行部発足 まるで”第2次麻生政権”の指摘も
自民党の高市早苗総裁が10月7日、新執行部を発足させた。当然のことながら、石破茂政権の主流派が一掃された。新たな中枢には高市総裁誕生の立役者となった麻生太郎氏が副総裁に、同派の鈴木俊一氏(麻生氏の義弟)が幹事長に、そして有村治子氏が総務会長にそれぞれ就任。このほか、高市総裁がリスペクトした安倍晋三元首相が主宰した旧安倍派から萩生田光一氏の幹事長代行の起用もあった。
この顔ぶれに、さすがに時代が逆戻り「これはやり過ぎだろう」、「これでは挙党体制ではなく、まるで”高市・麻生政権”」とか「”第2次麻生政権”」と揶揄する声も挙がる。
党内に自身の強い基盤を持たない高市氏が党内基盤強化のため、麻生氏に配慮するあまり、党内融和に影を落とす結果となった。そして、これで国債発行慎重派の麻生、鈴木両氏を前に、果たして積極財政出動派の高市氏が身上とする采配を振るえるのか?
高市総裁 連立政権の基盤安定化へ党内外との課題山積
野党間で統一候補を立てられない情勢から、立党70年にして初の女性党首を誕生させた自民党・高市早苗総裁が、初の女性総理大臣に選出される可能性が高まっている。しかし、高市内閣が誕生しても党内、党外いずれも、その連立政権の基盤安定化へ課題は山積だ。
党としてこれまで躊躇していた、思い切った政策を立案しても、政権の基盤が弱ければ断行できない。党内基盤はもとより自公政権との新たな連立先を模索して、政権基盤を強化しなければならない。党内的には今回の総裁選で支持を受けた勢力を、継続的に取り込むためのフォロー・施策がポイント。このため、高市総裁は選出された翌10月5日、日曜日にもかかわらず、総裁選でキーパーソンとなった麻生氏と会談。挙党体制を構築するため、党内主要人事などについて相談した模様だ。
政治とカネの問題の有権者の疑念が全く解消していない旧安倍派を主とする、いわゆる”裏金議員”らとの距離感、党内の主要人事と、政策を円滑かつ強力に推進するための適材適所の内閣のポスト配置とのバランスも重要だ。そして、それらは有権者の納得を得られるのか?
総裁選スタート時、連立相手の公明党の斉藤鉄夫代表が自民党の次期総裁として、あくまでも「保守中道」の人として、対外的に「保守タカ派(強硬派)」と目されていた高市氏を暗に否定的な発言をしていただけに、本音で高市総裁を党内挙げて歓迎できるのか?果たしてわだかまりはないのか?連立継続のための協議の行方が注目される。
さらに高市氏は政権基盤強化のための連立拡大を目指すとしているが、連立相手として俎上に挙がる国民民主党や日本維新の会とも、政策ごとの協力協議から連立へ踏み込むのは決して簡単ではない。国民民主、維新が掲げる主要政策を丸呑みすることは、どれだけ連立拡大を優先する覚悟があっても、不可能な相談だ。
一方、海外との関係もスムーズな外交関係の継続が図られるのか?高市氏は、歴史認識の違いから中国や韓国がナーバスになる、靖国神社参拝を”ぶれず”に強行してきた人だ。その高市氏が総理大臣に指名された後、保守タカ派のレッテルを貼った日本のトップを、果たして中国は腹蔵なく受け入れるのか?石破政権のもとで、日韓両首脳の間で”シャトル外交”が再開された韓国は、日韓関係で何か問題が起こったとき、またも両国の政府間では解決・処理済みの「徴用工」や「従軍慰安婦」問題を、民間団体が政府レベルの協議事項に持ち出してくることはないのか?どれもこれも難しい選択ばかりだ。
自民党の新たな”表紙”は高市早苗氏 初の女性党首
自民党の新たな”表紙”に、10月4日の総裁選で高市早苗・前経済安全保障相が選出された。”解党的出直し”が掲げられ、”#変われ自民党”のキャッチでスタートした今回の総裁選。退潮の一途をたどる全国の地方の党員・党友らの、「今のままでは自民党に未来の展望はない」との危機意識が色濃く反映された結果でもあった。
”石破続投”支持の世論とは別に、党内の鳴り止まない”石破おろし”を受け、フルスペックで実施された総裁選だった。それにもかかわらず、高市氏のほか、石破政権の継続・継承を打ち出した小泉農林水産相、林芳正官房長官らが優勢上位を占める情勢だった。これでは何も変わらない。危機意識に溢れた地方の党員らの思いとは裏腹に、全く”示し”がつかない。
そんな情勢にわずかに抵抗し、これまでとは違う表紙変えこそが初の女性党首・高市総裁の誕生だった。ただ、その選出過程はこれまでと何も変わらず旧派閥(安倍派。岸田派など)、そして現在も唯一残っている麻生派の動きで決した感のある選挙結果には疑問を感じざるを得ない。
米最高裁 トランプ氏がもくろむFRB支配に”待った”
万博にまだ難題 未払い問題絡み閉幕後の解体工事の行方
大阪・関西万博は9月27日時点で、一般入場者の累計が2,220万人に達し、運営費の黒字の目安としてきた2,200万人を超え、関係者らは安堵の表情だが、実はまだ大きな難題が控えている。海外パビリオンの工事代金の未払いに伴い、万博閉幕後の解体工事の行方が定まらず、問題を抱えている海外パビリオンが少なくないからだ。
解体工事業者などからなる団体が9月26日、博覧会協会に万博が閉幕した後に、新たな”未払いトラブル”が発生しないように申し入れを行った。同協会などによると、海外パビリオンの建設・工事を巡り、工事代金の未払いトラブルが生じている海外パビリオンは合わせて12館あり、各国が独自で建設しているパビリオンの約4分の1にあたる。
万博会場は閉幕後、自国建設の海外パビリオンは2026年4月までに解体を終えて更地にされる計画。しかし、大阪府解体工事業協会によると、近畿地方では産業廃棄物の処分場が万杯近くになっていることなどから、スケジュール通りに解体工事が進まない恐れがあるという。となると、工期が遅れ、予期せぬ費用の上振れが起きて、費用の”未払いトラブル”につながる可能性があるとの指摘もある。
万博の成功は、解体工事が完了するまで最終判断はできない。一般入場者やチケット販売が目標をクリアしたから成功と浮かれていてはいけない。最悪1年後も解体工事が終わらないパビリオンや建造物が残っていることも…。想定外の”汚点”になる可能性があるのだ。
自民党の”解党的出直し”はどうなった, 総裁選で言及なし
自民党の総裁立候補者5人による動向は連日マスコミで報道されているが、少数与党の今、野党との連立の可能性を考慮、各候補が突出した政策は控え気味にしているため、その主張に大きな差はなく、こんな選挙戦続ける意味があるのかと言いたくなる。そして、何よりも優先して論議されなければならないはずの論点が、決定的に欠けている。
同党が”石破おろし”に伴い、前倒しのフルスペックでの総裁選に向けて、有権者に対し掲げていた”解党的出直し”の論議が全くなされていないのだ。これはどうしたことか。掛け声だけだったのか。候補者5人から全く言及がなかったら、マスコミがなぜ議題にすることを求めないのか?それが、マスコミの使命・責任ではないのか、健全なジャーナリズムのあり方ではないのか。
個々の日々の暮らしに直結する物価高対策はじめ、経済、外交ももちろん大事なことだ。だが、先の参院選で数百万票もの支持を失った同党が、解党的出直しを掲げた以上、まず「我が党はこう変わります」と自ら積極的に有権者に訴えることが当たり前のことだろう。でなければ、支持が回復することなど全く望めないはずだ。
ところが、解党的出直しに関する各候補の考え方、主張は一切出ず、言葉の端にも出てこない。相変わらず、その本質は”表紙”替えの総裁選なのかと勘ぐりたくなる。これでは党の再生など望むべくもない。
中国李強首相 国連演説で世界のリーダー国を印象付け
米国・ニューヨークの国連本部で9月23日、トランプ米大統領、石破首相、李強中国首相、ネタニヤフ・イスラエル首相ら世界の首脳の演説があった。ここで際立ったのが、米・中の間で世界のリーダー国交代を印象付けるスピーチだった。
自身の価値観に基づくトランプ大統領の国連への非難、威圧、そして世界のリーダーたちを小馬鹿にした、前代未聞の独善的な主張や見解は聞くに堪えないものだった。一方、中国の李強首相の、誰もが共有できそうな表現と価値観に基づいた柔らかい物腰と主張に共感した人が多かったのではないか。
例えばトランプ氏は、気候変動に関する国連などの予測は「どれも間違っている」とし、「地球温暖化も寒冷化もない、これは史上最大の”詐欺”だ」とバッサリ。これに対し、李強氏は、ほとんどの人が反発・反感を抱いたトランプ氏のスピーチを見届けて、意識的にソフトな物言いをした側面もあっただろうが、国際協調路線を前面に好印象を与えたことは確かだ。
これまでは民主党・共和党と大統領の交代があっても、米大統領がその高い見識を持って、世界のリーダー役を担ってきたが、今やトランプ氏は米大統領であっても、とても”その任に非ず”、中国こそが国連の意を受け、それにふさわしいと思わせたのではないか。米国内にトランプ氏に、威圧して従わせるのではなく、理に基づききちんと導くことの重要さを説ける人はいないのか?これが米国のリーダーの”知”のレベルとしたら、米国という国の”恥”ではないのか?