ウクライナ戦争終結を巡り、米国トランプ政権とロシアのプーチン大統領との首脳会談に向けた準備協議が、サウジアラビアの首都リヤドで2月18日スタートした。一連の報道を見る限り、当事国のウクライナはじめEU(欧州連合)抜きで準備は加速、予想以上に米ロ首脳会談は早くなりそうな情勢だ。
この結果、前人未到の未開発地域ならともかく、21世紀のユーラシア大陸で、忌まわしい核武装国による軍事侵攻・侵略戦争が容認される事態が現実のものとなりそうだ。その浅ましい所業に米国大統領が積極的に手を貸し、主導的役割を果たすことになる。
ウクライナ抜きの交渉協議は認められないと声高に叫ぶゼレンスキー大統領や、米国のバイデン前政権とともにウクライナ支援を掲げてきたEUの、同交渉への参加意向を全く無視した形での”頭越し”協議だ。こんなことが認められるのか?どう考えてもおかしい。当事国ウクライナにとって、その未来に暗い影を落とすような形での決着を押し付けてはならない。
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唯我独尊 トランプ氏へ非難・批判の輪 世界へ広がる
トランプ氏が米大統領に就任して以降、世界のマスメディアに登場しない日がないくらい、連日同氏の発言が取り上げられ物議を醸している。そして共通しているのは、その中身が同氏への強い非難や批判だ。その輪は世界へ広がっている。唯我独尊、同氏の勝手な発言に、果たして世界はどこまで耐えられるのか?
一例を挙げれば、ロシアのプーチン大統領との電話会談で停戦へ踏み出したウクライナに対する発言や、停戦後のガザ地区の米国領有発言だ。これから本格的な交渉に入ろうかという段階で、もうウクライナに対して「領土回復の可能性は低い」とか、ガザ地区に居住する人たちには、停戦後は米国が保有し、保養地へ再開発するために、「他へ再移住してもらはなければならない」などと一方的かつ勝手な発言を繰り返す。
この人には、そのひと言が当事者に精神的にどれだけの苦痛や、大きなダメージを与えるかを考えることはないのか?と、こうした発言に接するたびに考えさせられる。
この人にそれを期待するのは無理なのだと考えるしかないのだ。何故ならこの人は悪名高い敏腕弁護士、ロイ・コーン氏から人生で成功するための独自の哲学ともいえる、①「攻撃」「攻撃」「攻撃」②非を絶対に認めるな③勝利を主張し続けるーーの3つのルールを脳裏に刷り込まれたといわれる人だからだ。この3つのルールと、第1次トランプ政権以降の彼の行動や発言を照らし合わせると、その中身は別にして「なるほど」と納得する。彼は忠実にこのルールに則って行動、発言しているに過ぎないのかも知れないと。したがって、彼は一般とは、あるいは他とは全く違うものさし(=価値判断基準)でものを見て判断、行動、発言しているのだ。そう考えれば彼の理不尽な発言もある程度、理解はできる。
もし彼が田舎の片隅で暮らしているのなら、それでもいい。しかし、現実には世界のリーダーを自認する米国の大統領なのだ。最低限、その発言の”重さ”を考えてもらわなければならない。
財務省文書の非開示訴訟「上告せず」過半数割れの効用?
森友学園に関する財務省の決裁文書の改ざんを巡り、関連文書の非開示決定を取り消した大阪高等裁判所の判決に対し、石破政権が上告しないことを決めた。石破首相は「誠心誠意、職務に精励されていた方が亡くなられたことを考えれば、判決を真摯に受け入れるべきである」としている。明らかに自・公で(いや、自民党単独でも)過半数議席を保持していた長期にわたる時代とは、全く異なった見解と言わざるを得ない。これまでの自公政権なら、どこまでもはねつけていたであろう判決を受け入れたのだ。今後、法令に則り改ざんの実情を、国民に対して、丁寧な説明責任が果たされることを期待したい。
この問題、安倍晋三首相時代の案件だ。当時、不当あるいは違法性を指摘された安倍氏は、国会答弁の中で後ろめたいところは全くないという意味で(そういうことがあれば)「首相の”座”はもとより、国会議員も即刻辞めますよ」とまで言い切った。その発言の重さに、関連文書に改ざんがあっても、何がどうあろうとも、関係閣僚としては”忖度(そんたく)”せざるを得なかったーーということだろう。圧倒的に過半数議席を保持していた当時の”安倍1強”時代だっただけに、異を唱えることは無理だった。
だが、議席の過半数割れ政権としては国民・有権者の声や思いに耳を傾けたら、そして野党への対応を考え合わせれば、自ずとこの結論になったのではないか。
世界は手前勝手なトランプ流に4年間耐えられるのか
米国で周知の通り、”米国第一主義”を掲げるトランプ大統領による、グローバルな地球規模の課題には一切耳を貸さない、自国の国益のみを追求し、わがまま放題ともいえる政権が1月20日、再び始動した。前バイデン政権の政策のほぼ全面撤回に始まり、就任直後から矢継ぎ早に不法移民の強制送還、「パリ協定」からの離脱、WHO(世界保健機関)からの脱退、貿易相手国の米国の輸入超国への軒並み関税引き上げ発表、パナマ運河やグリーンランド領有発言など数え上げたらきりがないほど。このトランプ流の手法が4年間続く。
米国との当事国の問題はさておき、例えば米国は中国に次ぐ世界第2位の二酸化炭素(CO2)排出国でありながら、地球温暖化に伴う気候変動対策の国際的枠組みパリ協定からの離脱を表明、国連に通知した。これにより米国は、CO2削減に留意することなく、またCO2排出量増大にも気後れすることなく、どんどん生産力を拡大していけるとの思惑だ。”米国を偉大に”の自身のお題目実現のために、次世代に何を残すのかといった視点は全くないのだ。
こんなやり方は異常だ。とても常識では考えられない。世界の報道機関、世界の有識者らは一様に、この状況を苦々しく思っている。しかし、”しっぺ返し”を怖れ、そして組織の安泰を図るために、異を唱えることに躊躇している。
だが、果たしてこれでいいのか。これまで、政権が変わっても米国は自他ともに認める世界のリーダー国の一つとして地球規模の課題にも率先して取り組んできたのではなかったのか。それを手のひらを返すように、手前勝手を押し通すやり方を止める勢力はないのか。米国を除くG7、G20、グローバルサウスの首脳は、そして国連はこの”トランプ流暴走”をみているだけなのか。これから4年間、様々な分断が広がり、様々な弊害を生むトランプ流に世界は耐えられるのか?