月別アーカイブ: 2013年1月

伊藤博文暗殺めぐる漱石の寄稿発見

伊藤博文暗殺めぐる漱石の寄稿発見
 伊藤博文が旧満州(現在の中国東北部)のハルピンで独立運動家の安重根に射殺された事件をめぐり、夏目漱石が満州の邦字紙に寄せた所感が見つかった。漱石が寄せた記事は、1909年11月5日付と翌6日付の「満州日日新聞」の「韓満所感」。漱石はこの事件に、「稀有の兇変」と驚き、ただ「余の如き政治上の門外漢は遺憾ながら其の辺の消息を報道するの資格がない」と記し、距離を置いて見ている。漱石の全集には未収録の資料という。見つけたのは作家の黒川創さん。黒川さんはこの記事を手掛かりに時代を考察した小説「暗殺者たち」を執筆、1月7日発売の文芸誌「新潮」2月号に掲載されている。

岐阜・安八町の結神社で盗難の神像見つかる

岐阜・安八町の結神社で盗難の神像見つかる 岐阜県警大垣署は、縁結びの神社として知られる岐阜県安八町の結神社で、10月に本殿内から盗まれた木製の神像17体が見つかったと明らかにした。結神社の氏子総代の男性が12月25日朝、高さ約25㌢の神像17体が入った白い袋を境内で見つけた。大垣署は神像を盗んだ犯人が返したとみている。

秀吉の豪奢な聚楽第の石垣見つかる

 京都府埋蔵文化財調査研究センターは12月21日、関白の豊臣秀吉が1587年、公邸として築いた豪奢な城郭、聚楽第(京都市上京区)の本丸南側で、東西32㍍にわたり石垣が見つかったと発表した。石垣は石を3、4段積み、高さは最大2.3㍍。一辺0.7~1.5㍍の花崗岩の自然石を使用。最も大きなものは重さ1.8㌧。上部が壊され、当時の高さは不明。石垣からさらに東へ約10㍍に大手門があったとされる。聚楽第は、秀吉待望の秀頼が誕生した後、同邸の主となっていた跡継ぎの甥・秀次を謀反の疑いで処刑した際、1595年、秀吉の命により徹底的に破壊され、遺構は残っていないと考えられていた。

大阪・野中古墳発掘時の映像発見

 大阪大学は、1964年に大量の鉄製甲冑(かっちゅう)が出土した野中古墳(大阪藤井寺市)の発掘の様子を撮影したカラー8㍉フィルムが見つかったと発表した。考古学研究室のホームページで15分間の映像を公開している。同古墳は世界遺産登録を目指す「百舌鳥・古市古墳群」の一つで、国史跡。野中古墳は5世紀半ばに造られた1辺37㍍の方墳。

ツタンカーメン暗殺?のアイの名刻んだ指輪出土

 日本のアコリス調査団によると、エジプト中部のアコリス遺跡から紀元前1320年ごろに、ツタンカーメンの次に第18王朝の王(ファラオ)だったアイの名が刻まれた指輪が出土したことが分かった。出土したのは焼き物の青い指輪で、4分の3ほどが欠けていた。大きさは縦約2.2㌢、幅約1.4㌢。アイはツタンカーメンを暗殺したとの俗説もあるが、在位が4年と短く、関連する遺物は極めて少ない。したがって、謎の多い古代エジプト王の治世を知る手がかりになるとみられる。アコリス遺跡は、カイロから南に約250㌔のナイル川東岸にある都市遺跡。紀元前2300年代の前半から約3000年間にわたり、人が生活していた痕跡が残っている。

<歴史くらぶが選んだ2012年の20大ニュース>

1.9世紀の土器片に最古級の平仮名発見 藤原良相邸宅跡
2.尾形光琳の「八橋図屏風」全面に金箔下地
3.平城宮朱雀門前で新たに鉄鍛冶工房の跡発見
4.都内収蔵庫で菱川師宣の肉筆画見つかる
5.奈良後期の775年に大量の宇宙線 屋久杉の年輪から判明
6.難波京の南で大規模建物群跡発見 京の範囲拡大も
7.勝海舟、大久保利通らの岩倉具視宛て書簡発見
8.生麦事件の犠牲者の手紙見つかる 日本の好印象綴る
9.滋賀・園城寺の仏像内に足利尊氏?の遺髪 包み紙見つかる
10.本願寺史料研究所で春日局、吉良上野介の書状見つかる
11.森鴎外の離婚に至る書簡の下書き見つかる 気性合わず
12.米沢藩士が会津戦争の開戦の様子伝える手記見つかる
13.小林一茶自筆の草稿発見 撰集「三韓人」の一部
14.錦絵「百物語」は葛飾北斎の真作 専門家が確認
15.津波で被災した?縄文人の複数の人骨出土 宮城・東松島
16.9世紀の大宰府の長官級の墳墓見つかる 福岡堀池遺跡
17.青森県で野口雨情の直筆作品4点見つかる
18.棟方志功の未発表の35作品見つかる 青森で公開
19.大阪・瓜破遺跡で弥生期の環濠集落見つかる
20.弥生時代の水田跡から採取した土でイネを栽培実験 奈良

難波京の南で大規模建物群 京の範囲拡大も

 大阪市教育委員会と大阪市博物館協会大阪文化財研究所は12月19日、同市天王寺区の北河堀町所在遺跡で、7~8世紀ごろとみられる5棟の大規模な建物跡が見つかったと発表した。中心にある建物は東西6.3㍍、南北14.3㍍。柱の直径は30㌢。この建物を囲むように、他の4棟が整然と配置されていた。有力貴族の邸宅か役所とみている。今回発見された場所が、これまで想定されていた難波京(東西約1.6㌔、南北約4.2㌔)のすぐ南側であることから、京の範囲がさらに南に広がる可能性もあるという。

石器づくりの”工房”発見 長崎・福井洞窟

 長崎県佐世保市教育委員会は12月18日、同市の福井洞窟で、旧石器時代末期(約1万8000~1万6000年前)の石器や炉の跡が出土したと発表した。縄文時代草創期の石器や土器、同早期の黒曜石の剥片も見つかり、同じ洞窟を複数の時代で繰り返し利用した様子が分かる貴重な発見という。見つかったのは細石刃や石核など。旧石器時代末期から縄文時代にかけて石器の製作技術が進歩していく過程も追えるという。炉の跡は3基見つかり、最大で幅約75㌢、長さ約67㌢だった。旧石器時代末期より古い地層からは、幅2㍍、長さ1.5㍍の範囲で、こぶし大から直径50㌢程度の石を地面に敷き詰めたとみられる跡が見つかった。何に使われたかは分からないという。

100年ぶり修理中の正倉院内部を報道陣に公開

 宮内庁正倉院事務所はは12月14日、大正時代以来、約100年ぶりに修理中の正倉院(奈良市)の内部を報道陣に公開した。修理の中心は、傷みの激しい屋根瓦の葺き替えや軒先の垂れ下がりを抑えるための内部構造の補強。公開されたのは、3室に分かれた正倉院の北倉と中倉。修理を前に宝物を収めていた唐櫃(からびつ)や明治時代の陳列棚が解体され、校倉(あぜくら)造りの壁があらわになっている。中倉では、校木(あぜき)がよりシャープな状態で残っていた。北倉では校倉造りに隙間が目立った。

東京タワーなど27都道府県の126件を文化財に答申

 文化審議会は12月14日、東京タワーなど27都道府県の建造物126件を登録有形文化財にするよう田中真紀子文部科学相に答申した。近く答申通り告示される。東京タワーは1958年に完成した在京テレビ、ラジオ放送の総合電波塔で、高さ333㍍は当時、パリのエッフェル塔を凌いで自立式鉄塔として世界一を誇った。他には高さ44㍍で現役の灯台では国内最高の「出雲日御碕灯台」(島根県出雲市)、1811年完成の浄土真宗寺院「蓮慶寺本堂」(愛知県阿久比町)、1933年に建てられたアールデコ風の住宅「旧岡田家住宅主屋」(北海道旭川市)など。