私説 小倉百人一首 No.16 中納言行平

中納言行平
※在原行平。業平の兄。

たち別れいなばの山の峰におふる
       まつとしきかばいまかへりこむ

【歌の背景】因幡守に任じられた行平が、任地へ赴くため京を出立するにあたり、親しい人に名残りを惜しんで詠んだもの。「因幡」の国にある「稲羽」山、「松」と「待つ」というように掛詞を二つ使っているところにおもしろさがある。

【歌意】私はこうしてあなたと別れて行きます。でも、あの稲羽山の峰に生えている松の「待つ」という言葉のように、あなたが私を待っていると聞いたら、すぐにも帰って来よう。

【作者のプロフィル】在原行平。平城天皇の皇子・阿保親王の第二子。母伊豆内親王は桓武天皇の皇女。天長年間(826)在原氏として臣籍に下る。業平の兄。経済の才能があり治績をあげた。天慶年間、中納言正三位となり、寛平年間(893)76歳でなくなる。仁明・文徳・清和・陽成・光孝・宇多の六朝に仕えた。