「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、介護の需要は今後確実に増大していく中、介護事業者の経営破綻が増勢をたどり、とりわけ訪問介護を担う事業者は廃業が相次いでいる。このままでは”介護難民”が巷にあふれることになる。
民間の信用調査会社によると、2024年に倒産や廃業に追い込まれた訪問介護事業者は529社に上り、過去最多だった。これは政府が介護現場の実態を知らず昨年、訪問介護サービスの報酬を引き下げたことが経営悪化に拍車をかけたためだ。訪問介護も都市部と、過疎化の影響で移動に時間がかかる地方の事業所では全く事情が違う。このことを理解していないと、今回のように間違った判断で報酬引き下げを行うことになり、細々とできつつある”介護ネットワーク”そのものを決定的に壊すことになる。
そもそも日本の介護職の待遇は極めて低い。介護職員の平均月給は約30万円で全産業の平均より6万円低い。そのため、若い世代では介護職に就きたがらない。その結果、介護職は常に人手不足状態にある。とくに介護スキルはじめ一定の経験がないと務まらない訪問介護は容易に補充できず、要介護者の様々な会話の相手をしなければならないだけに、施設介護に比べ人手不足は深刻だ。
増え続ける要介護者の中長期予測を前に、国は「施設介護」から「在宅介護」に軸足を置くことを宣言しながら、その現場における実践者の訪問介護職・事業者をもっともっと支援強化していく体制をなぜとらないのか?端的にいえば、この要因は国会議員の質の低下だ。限られた期間の議員生活で票につながる、あるいは目立つ分野で目に見える政策に携わらないと有権者に評価してもらえないと、次の選挙を考えるからだ。
議員がグループを作り、介護職の待遇の抜本的見直しを図り、国としてこれからの超高齢社会に必要な介護職を、全職業全体の平均の2〜3割高にまで引き上げ、介護職を魅力ある職種の一つにしていくことを目指すべきだ。
政府は4月から、「技能実習生」や「特定技能」の在留資格で来日した外国人について、日本語能力と介護スキルを持ち、介護施設で1年以上の勤務経験があることを条件に、訪問介護に携わることを認めた。ただ、事業者が外国人を”安い労働力”とみなしているようでは人は集まるまい。介護に携わる外国人の処遇改善もまた、重要な課題だ。