昨今のコメを巡る動きをみていると、政府は農政、コメ農家の中長期的なビジョンをゼロベースで考え直す時期にきているのではないか。
コメの減反政策の失敗、コメ生産農家から、集荷・卸・小売りに至る流通全般、JAに様々な役割・機能を担わせてきた経緯などすべて一旦、白紙に戻す。そして、この機会に生産農家の生計が成り立つような、コスト面からの適正価格、消費者が国産米ならいくらまでなら許容し購入するのか、それぞれ算出。それによって、国産米と輸入米を用途にひもづけする形で棲み分けしたらいいのではないか。例えば5kgあたり、輸入米なら3,000〜3,400円、国産米なら3,500〜3,800円といった具合に設定。この中で生産、流通、小売り、外食事業者らが採算が成り立つように政府が交通整理したらどうか。
いつまでも、様々な制約がある現状のコメに関する枠組みの中で、小手先で一部分だけを変えて運用してみても、ツギハギだらけでは制度として誰もが納得できるものにはならない。この際、中長期的視点から抜本的に見直すことが求められている。
<コメを巡る最近の動向>
2025年産米の作付けが本格化する中、集荷業者のJA(農協)や外食チェーン大手などが、今年収穫される2025年産米の「青田買い」に動き始めている。一方、国産米が高騰する中、イオンや西友など小売りや、牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーホールディングスや、吉野家ホールディングス、「松屋」を展開する松屋フーズホールディングスなど外食業界では、米国カリフォルニア産、台湾産、ベトナム産など海外産米を活用する動きが加速している。
日本人の主食であるコメは、消費者から味や品質面で厳しい目が向けられ、国産信仰は根強い。だが、価格が昨年の2倍を超える水準で高止まりしたままでは、多くの消費者はさすがに背に腹は変えられず、国産品に比べ割安の海外産にも一定の評価が集まり、適性用途を形作りつつある。
こうした状況を踏まえて、卸売業者や商社による海外産米の輸入拡大の動きも活発化している。コメ卸大手の神明は7月頃までに約2万トンを輸入する予定で、すでに大半は成約済みという。総合商社の兼松も輸入量を当初予定していた年間1万トンを2万トンに引き上げる方向で検討しているという。