判読難の井伊直弼直筆の和歌集を現代文字で出版
滋賀県彦根市の歴史好きの主婦たちがこのほど、文字の判読が難しいため、これまでほとんど全容が知られていなかった幕末の彦根藩主・井伊直弼直筆の和歌集を現代の文字に置き換えて読みやすくした本を出版した。
今回出版されたのは、井伊直弼が自ら詠み直筆で書き残した1030首余りの和歌集「やなぎのしづく」。国の重要文化財に指定されている「彦根藩井伊家文書」の一つだが、癖のある独特の字体で書かれているため読み解くことが難しく、その全容を知る人はこれまで研究者でもほとんどいなかった。
この難解な和歌集を解読しようと取り組んだのが同市の主婦の歴史愛好家たちで、およそ20年かけて作業を続け出版にこぎつけたという。
和歌集には恋愛や四季折々を詠んだものなどが収められている。このうち「めくますて あるべきものが道のへに 出たつ民のまことこころを」という歌は、藩主として初めて彦根に入った直弼が、領民の出迎えを受けて感激した心境を表現している。
井伊直弼といえば、「安政の大獄」で幕閣の大老として辣腕を振るい、吉田松陰や橋本佐内らの英才をはじめ数多くの人を死に追い込んだ怖いイメージ。しかし、これとは一線を画す、一人の文化人、そして領民を思いやる藩主・直弼の姿が垣間見られる歌集といえそうだ。