薄くて軽く、曲げられるうえ、屋内のような光が弱い場所でも発電できる「ペロブスカイト太陽電池」は、今回の大阪・関西万博の目玉の一つだ。日本には太陽電池の世界市場で、政府支援を受けた中国企業に価格競争で敗れた”苦い”経験がある。しかし、今回のペロブスカイトでは事情が違う。何としても政府はじめ官民挙げて育成・主導、ペロブスカイトで世界を変える技術の一端を示してほしいものだ。
万博会場で①背中に黒いフィルムを貼り付けたベスト「発電するベスト」を着用した出展スタッフ②電子看板やカメラを備えた多機能電柱「スマートボール」に巻き付け、発電③バスターミナルの屋根に全長250mにわたって設置。夜間照明に活用④パビリオンの敷地内に、表面にアート作品を表現したガラス一体型のペロブスカイトーーなど、これらすべてがペロブスカイト太陽電池ならではの活用例だ。衣類だけでなく、あらゆるものに活用できる可能性があり、まさに「街中どこでも発電所」の実現が期待される次世代太陽電池の本命だ。
ペロブスカイトは桐蔭横浜大の宮坂力特任教授が発明した日本発の技術であり、特許も多い。生産技術でも先行している。エネコートテクノロロジーズ、積水化学工業、パナソニックホールディングスなど大手企業が製品化に取り組んでいる。
日本は主な原料となるヨウ素の産出量も多い。世界の3割近くを占め、チリに次ぐ2位。ほかの原料も日本国内で調達することができる。
ただ、中国勢はペロブスカイトで」も主導権を握ろうと猛追しているという。普及して生産コストが下がるまで政府が資金を支援し、日本のペロブスカイト産業の規模を大きくしていってもらいたいと切に願う。