米トランプ政権が発表した「相互関税」の税率を巡り、算出方法への批判が高まっている。米通商代表部(USTR)が発表した計算式には複数のギリシャ文字が含まれ、難解そうに見えるが、有識者によると貿易赤字額を輸入額で割った単純な割り算で、「全くの間違いだ」との指摘が相次いでいる。
米シカゴ大学のブレント・ニーマン教授は4月7日のニューヨーク・タイムズへの寄稿で、「全くの間違いだ」と計算方法を批判。そして「私たちの研究によれば、算出される税率は大幅に縮小されるべきだ」と主張。そのうえで打ち出された今回の相互関税の税率について、トランプ政権が自身の論文をずさんに引用した可能性に言及している。また、米政策研究機関のアメリカン・エンタープライズ研究所の計算でも、相互関税の実際の税率は、発表された数字の約4分の1になるという。
イエスマンだけで固めたトランプ政権は、肝心要の政策の論拠、算出法については外部の専門機関やシンクタンクをブレーンに起用して緻密に進めるべきだった。
ところがトランプ氏は、自分の想いだけですべて押し通した結果、はからずもノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏に「試験勉強もせずに誤魔化しで、試験を乗り切ろうとした学生に似ている」と揶揄(やゆ)される、取り返しのつかない大失態となった。ことの重大性を認識するなら、トランプ氏は世界に謝罪し即刻、すべてを白紙に戻すべきだ。
日本政府は来週にも、赤沢亮正経済再生担当相を訪米させ、米側経済閣僚トップのベッセント財務長官との交渉が開始される。きちんとした論拠不明の、しかも間違った、こんな手前勝手な税率を前にした交渉では、日本は忍耐強く、冷静に徹底して”yes but”法で対応。きちんと主張すべきだ。決して相手方の、トランプ流の”脅し”や”恫喝”に負けてはいけない。”利”や正義はこちらにあり、相手にこそ”非”があるのだから…。この交渉の成り行きは世界が注視している。