米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は4月30日、米電気自動車(EV)大手テスラの取締役会は1カ月前ににイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)(53)の後任選びに着手したと報じた。マスク氏の政治的言動により、業績が低迷しているためだ。
マスク氏は2008年からテスラのCEOを務め、時価総額で世界最大の自動車会社に成長させた。さらに同氏はX(旧ツイッター)や宇宙開発企業スペースX、AI(人工知能)開発企業XAIなど数多くの有力企業を率いる有能な実業家であり、世界一の大富豪でもある。
ただ、トランプ政権の「政府効率化省(DOGE)」のトップとしてマスク氏が米政府機関の人員削減を強引に進め、欧州で政治家を公然と批判する行動を繰り返し反発を招き、米欧を中心にテスラへの不買運動や抗議活動が広がってしまった。マスク氏に対する欧米の反発、批判・非難は尋常ではない。
この結果、テスラの業績は急ブレーキがかかり、同社の株価は約30%下落した。4月22日に発表した2025年1〜3月期決算は、最終利益71%減の4億900万ドルに沈んだ。EV販売台数は33万6,681台にとどまり、過去最大の落ち込みを記録した。
過去最大の業績不振、それに伴う株価の下落、そして企業のCEOとしては明らかに冒してはならない、一線を超えた他国の政治に干渉する発言の数々など、これらの経緯を踏まえ、突き詰めて考え合わせれば、ここはいったん退任すべきなのではないか。それが株主に対するきちんとした責任の取り方ではないのか。
WSJの報道に対し、本人やテスラ幹部は否定している。だがこの際、CEOを交代させることこそが企業としてあるべき姿で、引いてはそのことこそがマスク氏をも守ることにつながるのではないか。