トランプ米政権の高関税政策の協議の中で、日本が国を挙げて徹底して取り組まねばならない課題が明らかになった。それは米国との付き合い方、とりわけ貿易相手国としての徹底的見直しだ。ずばり、可能な限りの米国の構成比率引き下げだ。脱米国、米国依存型貿易の脱却を推進することにかかっている。とても短兵急には進まないだろうが、あらゆる産業、業種は覚悟を決めて品目ごとに地道に市場の分散化、貿易相手国の多極化を図る以外に道はない。それが実現できてこそ、今後の米国の無理・難題の要求にも、「確かにこちらとしては打撃を受ける」が、受けて立つ形で堂々と「どうぞおやりください」との言い方ができるようになる。
日本の歴代政権には、トップ(首相)が変わっても日米同盟の固い結束がある限り、国際的なステージでは日本にはある程度のアドバンテージがあるものと思っていた。それが日本側の勝手な過信に過ぎなかったことが明白になった。そんなものは全く存在しないのだと。
確かにトランプ氏は米国の席代大統領とは全く異なる、異質の人物だ。頑迷な、人のいうことには一切耳を貸さない。何でもディールになぞらえて損得勘定で判断する。これ以上、厄介な人物はいないともいえる。しかし、日本を含めまだまだ合意に至っていない国・地域との関税協議が、どのような決着を見るのが未知数とはいえ、トランプ氏の一方的な”押し付け”と”脅し”を、挙(こぞ)って批判・抵抗もできず、世界の国々・地域の首脳が米国・トランプ氏の意向に沿って対応したことは動かし難い事実だ。これに味をしめた以上、これが先例となって今後も、少なくとも米国との貿易の枠組みは、米国の主導や意向に沿って動いていくことになろう。
一部にトランプ氏が任期を全うし退任すれば、また是正も可能ではないのかとの、根拠のない希望的観測を口にする向きもあるが、そんな安易な見方は徹底して排除すべきだ。トランプ氏に近い共和党保守層の政治家は、米国にとって格好の先例を作ってくれたとトランプ氏を称えているのだから。一旦、敷かれ直したレールは、そう簡単に元には戻らないと理解すべきだ。