中ジャワ州の地方都市の産業振興に一役買う 富士蒲板

中ジャワ州の地方都市の産業振興に一役買う 富士蒲板

インドネシア中ジャワ州の地方都市、小さな県プルバリンガ県の産業振興に一役買っている日本企業がある。山口県下関市の富士蒲板だ。社名から分かる通り、蒲鉾の板を本業とする企業だ。当初は同地の植林木を活用した蒲鉾板の生産を委託するだけだったが、現地の木材をはじめ、ヤシから作る砂糖の日本への輸出にも乗り出している。インドネシアとつながることで、富士蒲板はイスラム教の戒律に沿った「ハラル」の知識を深め、この知識を日本国内の蒲鉾産業の活性化につなげる試みも進める。

富士蒲板が事業を手掛けるプルバリンガ県は、格別特徴のない、人口約90万人の地方都市だ。首都ジャカルタから東へ約400㌔、中ジャワ州の州都スマランから西に約200㌔の位置にある。最低賃金は約100万ルピアとジャカルタの半分以下だ。そんな地に、北米産のモミに代わる蒲鉾板を探しにやってきたのが、同社の清水政志常務だ。1995年ごろのことだ。当時、原価が販売価格を上回る状況にあり、事業の抜本的見直しを迫られていたからだ。同地の松の植林木を見て、プルバリンガ産の松(メルクシパイン)を採用することに決めた。

ただ、品質的な問題を克服するには時間がかかった。技術協力を開始してからも、当初はヤニが多く、松特有の臭いも強いことから、最初の10年ほどは積極的に顧客企業に提案できる品質ではなかったという。そこで、大型ボイラーを導入し、殺菌や消臭、ヤニの除去も実現したことで、品質が格段に向上した。

その結果。5年前には3カ月に1度のペースで1TEU(20フィートコンテナ1個分)を日本へ輸出していたが、今では1カ月に3TEUを輸出するまで現地生産を拡大。同社の全出荷量月200万枚のうち、6割をプルバリンガ県で生産している。現地で生産を請け負うのは県知事の親族が運営する地元企業だ。また、有機栽培されるヤシから作る砂糖の日本への輸出にも期待が膨らむ。プルバリンガ県が協力して、インドネシアのハラル認証機関との間で手続きを進めている。日刊工業新聞などが報じた。