南方熊楠の自画像発見 奈良県五條市の旧家で

南方熊楠の自画像発見  奈良県五條市の旧家で

生態学や民俗学の先駆者として知られる博物学者、南方熊楠(みなかたくまぐす、1867~1941年)の自画像を描いたはがきが、奈良県五條市近内町の旧家「藤岡家住宅」(国登録有形文化財)で見つかった。熊楠が1921年11月に元官僚で当主の藤岡長和に宛てたもの。自画像は上目遣いの迫力ある表情で、縦じまの黒いどてらをまとって紺の帯を締めた姿。右手に巾着を持ち、左手を差し出している。

「おや方が  おや方那(な)くて  暮の秋」「原首相殺され  嚢中偶(のうちゅうたまたま)空ときたので」とあり、4日前に発生した、官僚の親方である原敬首相暗殺事件に触れる一方、財布が空になったと伝える。ちゃめっ気で描いたと考えられる、熊楠らしいはがき–と専門家はみている。専門家によると、熊楠は自画像をいくつか描いているが、こうした写実的な描写は珍しいという。