「新技術・新開発」カテゴリーアーカイブ

関電 4月から水素混焼発電 実証実験 万博に電力供給

関西電力(本社:大阪市北区)は3月28日、姫路第2火力発電所(所在地:兵庫県姫路市)で、燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を燃料に混ぜて発電する「水素混焼発電」の実証実験を4月から始めると発表した。発電した電力は、同月13日に開幕する大阪・関西万博会場に供給する計画だ。
実証実験では、燃料に使う液化天然ガスの最大30%(体積比)を水素に置き換え燃焼する。90分間発電した場合、30トン程度のCO2削減につながるという。発電能力や設備などへの影響を検証したうえで、2050年までに、水素だけで燃やす「水素専焼」の実現を目指す。

世界初 和歌山 JR初島駅で3Dプリンター使い新しい駅舎

和歌山県有田市のJR初島駅で3月25日、世界で初めて3Dプリンターを使って新しい駅舎が建設された。駅舎は高さ2.6m、広さはおよそ10㎡。屋根や駅など4つのパーツがトラックで運び込まれ、クレーンなどを使って組み立てられた。工事はおよそ6時間で終了した。JR西日本によると、3Dプリンターを使用した駅舎の建設は世界で初めて。
これらのパーツはあらかじめ、セレンディクス(所在地:兵庫県西宮市)が3Dプリンターを使いモルタルで型枠をつくり、内部に鉄筋コンクリートを組み込んだもので、耐震性は鉄筋コンクリート造りの住宅と変わらないという。

JFEなど3社 製鉄由来のCO2から樹脂原料 26年度に実証実験

JFEスチール、三菱ガス化学、三菱ケミカルの3社は3月24日、製鉄所由来の二酸化炭素(CO2)から製造したメタノールを樹脂原料として使う実証実験を2026年度に始めると発表した。3社の生産拠点が隣接する水島コンビナート(所在地:岡山県倉敷市)で、空気中へのCO2排出を減らし、メタノールの効率的製造方法などを検証する。
JFEスチールが製造過程で発生したCO2を含む副生ガスをパイプで送り、受け取った三菱ガス化学がメタノールを製造する。これを使って、三菱ケミカルが樹脂原料の一種、プロピレンをつくる。この実証実験を進めるため、三菱ガス化学は年産100トンのメタノール製造設備を新設する。

コスモエネHD, UCDI CO2由来次世代エタノールで共同検討

コスモエネルギーホールディングス(HD)とCO2資源化研究所(以下、UCDI)は3月21日、「UCDI(R)水素菌」を用いて、CO2をエタノールに変換するCarbon dioxide Capture and Utilizetion(以下、CCU)の実現に向けた共同検討に関する契約を締結したと発表した。
食料や植物を原料として生産される食料作物由来のエタノールには、食料との競合や生産効率の限界、土地利用などに課題がある。これらの点を踏まえると、期待されるのが今回の両者の取り組みだ。
UCDI高い増殖技術を有する独自の水素菌「UCDI(R)水素菌」を開発し、CO2と水素を原料にエタノールを生産することができる技術・特許を保有している。この技術により、食料を原料としないエタノールの大量生産が可能となり、CO2排出量の削減とバイオ燃料製造の両立が期待される。

脊髄損傷 iPS細胞で機能改善 世界初の臨床研究 慶応大

慶応大などの研究チームは3月21日、脊髄損傷で体が麻痺した患者4人にiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した細胞を移植した世界初の臨床研究で、2人の運動機能が改善したと発表した。
発表によると、患者は受傷後2〜4週間の18歳以上の4人で、受傷した首や胸から下の運動機能や感覚が完全に麻痺した。チームは健康な人のiPS細胞から神経のもとになる細胞をつくり、2021〜2023年、患者1人あたり約200万個の細胞を傷ついた脊髄に移植。患者は機能回復を促すリハビリなどを続けた。
移植の約1年後に有効性を検証した結果、運動機能の5段階のスコアが1人は3段階、1人は2段階改善した。残る2人もスコアは同じだったが、改善はみられたという。
チームは麻痺が固定した慢性期患者を対象にした治験を2027年に行う方針を明らかにした。脊髄損傷は交通事故などが原因で、国内の新規患者は年間約6,000人。慢性期の患者は10万人以上とされる。

「マイiPS細胞」培養・作製施設公開 中之島クロス内に開設

京都大iPS細胞研究財団(山中伸弥理事長)は3月18日、大阪市北区の最先端医療の国際拠点「中之島クロス」内に開設した患者本人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を全自動培養装置で作製する施設を報道陣に公開した。同施設で細胞作製に関する国の許可を近く取得する見込みで、高品質の医療用iPS細胞の作製を始める。
延床面積約1,400㎡の同施設は、総工費約15億円を投じて整備された。ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長からの寄付を基に整備され、「Yanai my iPS製作所」と命名された。

水素で動く自販機 コカ・コーラ, 富士電機が共同開発 世界初

コカ・コーラボトラーズジャパンは3月18日、富士電機と共同開発した水素発電で動く自動販売機を大阪・関西万博の会場(所在地:大阪市此花区)内に設置した。稼働時に二酸化炭素(CO2)を排出しないのが特徴で、水素で動く自販機は世界初という。同日、大屋根リングの下に設置された。
水素で動く自販機は、本体の横に水素カートリッジを18本入れた発電機を備え、水素と酸素を化学反応させ発電する。会期中、富士電機が定期的に水素カートリッジを交換し、水素を充填するという。

阪大G 胃カメラ検診で”すい臓がん”早期発見 新たな診断法 

大阪大学などの件グループは、胃カメラの先に装着できる特殊なカテーテルを使い、胃がんの検診をしながら早期発見が難しいとされるすい臓がんも高い精度で診断する方法を開発したと発表した。すい臓から分泌されたすい液を胃の先にある十二指腸で回収し、遺伝子の変異した量を調べるもの。
グループが9の医療機関で健康と診断された46人と、初期のすい臓がんと診断された患者41人を対象に、この方法の精度を調べたところ、健康な人はいずれも陰性で、患者は80%余にあたる33人が陽性となり、高い精度で初期のすい臓がん患者を見極めることができたとしている。

島津製作所 誤差100億年で1秒「光格子時計」受注販売開始

島津製作所(本社:京都市中京区)は3月5日、誤差が100億年に1秒程度で、世界で最も正確な時計とされる「光格子時計」の受注販売を開始すると発表した。重さはおよそ200kg。価格は5億円からとなっている。販売目標は3年間で10台を見込んでいるが、すでに複数の問い合わせがあるという。
光格子時計は、東京大学の香取秀俊教授のグループが開発した時計で、ノーベル賞の受賞も有力視される技術として注目されており、高精度で時間を計測する必要がある次世代通信や、最先端の物理研究に使われることが想定されている。

慶応大G 鎌倉の土壌から難分解性PPの分解菌を発見

慶応大学理工学部、同大先端科学技術研究センターなどの研究グループは2月28日、鎌倉市の土壌から添加剤を含まないポリプロピレン(以下、PP)を分解する微生物の取得に成功したと発表した。さらにこの微生物がPPと全く異なるポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックも分解する能力を持つことを突き止めた。これは画期的な発見で、近年、廃プラスチックが地球規模の環境汚染問題となる中、課題解決の足掛かりになると期待される。