「新技術・新開発」カテゴリーアーカイブ

阪大 妊娠マウス実験 鉄分の不足が子供の性別決定に影響

大阪大学大学院の研究グループは、鉄分の不足がマウスの性別の決定に影響するとの研究成果を科学誌『ネイチャー』に発表した。グループによると、マウスのオスの精巣は「Sry」という遺伝子が活性化することでつくられ、その活性化には鉄分を使う特定の酵素が関係しているという。
そこで実験では、あらかじめ鉄分が少ないエサを与え続けたマウスに、この酵素を半分に減らす遺伝子捜査を行った受精卵を移植し、その後も鉄分を少なくした状態で出産させた。
その結果、遺伝的にはオスのマウスにもかかわらず、43匹のうち2匹が精巣ではなく卵巣があり、メスの体として生まれたという。グループは、鉄分の不足がマウスの性別決定に影響を与えたとみている。

ユニ・チャーム, 王子と協働 パームヤシ空果房使用段ボール

ユニ・チャーム(本社:東京都港区)は6月5日、王子ホールディングス(本社:東京都中央区)と協働し、パームヤシ空果房(以下、EFB)を原料の一部に用いたEFB・パルプ混さ段ボール原紙の開発に成功したと発表した。この段ボールはユニ・チャームのインドネシア現地法人が製造する一部商品の梱包資材として採用する。同社が進めるSDGsの取り組みの一環。

大成建設, ユーグレナ「サステオ」建設現場に初導入, 脱炭素

大成建設とユーグレナは6月5日、東京経済大学国分寺キャンパス第2期工事(施工:大成建設)で、CO2排出量を半分に抑える、ユーグレナの次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を建設機械や車両燃料として導入したと発表した。この燃料の建設現場への導入は国内初。
サステオは、軽油にHVO(水素化植物油、合成燃料)を51%混合したバイオ燃料で、CO2排出量を51%削減した、ユーグレナが開発した軽油代替燃料。国内経由の要求品質に適合しており、公道走行が可能なほか、既存の建設機械・車両にそのまま使用できる。

リニア中央新幹線工事 愛知県でシールドマシン使い本格化

JR東海によると、リニア中央新幹線のシールドマシンを使った工事が6月2日、愛知県春日井市で始まった。トンネルの掘削作業は、山間部では爆破させて掘り進める方法が主流だが、都市部ではこの方法は取りにくい。
名古屋市中心部から春日井市にかけての19.8kmは、地表から最深100mのところにシールドマシンで円筒状のトンネルを掘り、車両が通る空間をつくる。この工法は地上への振動や地下水への影響が少ないとされる。

遺伝性アルツハイマー病 iPS創薬で見つけた薬で最終治験 

京都大学グループ、大阪の医薬品メーカー、東和薬品は6月3日、遺伝性のアルツハイマー病治療について、iPS細胞を薬の開発に応用する「iPS創薬」と呼ばれる手法で効果がみられた、パーキンソン病の既存の治療薬「ブリモクリプチン」にアルツハイマー病と関係する物質を減らす効果があることを見つけ、この実用化を目指し最終段階の治験を始めたと発表した。
グループはこれまで特定の遺伝性アルツハイマー病の患者を対象に治療を行ってきた。その結果、ブリモクリプチンを投与した患者は認知機能の低下など、症状の進行が抑えられる傾向があったという。そこで実用化に向けて、東和薬品が患者24人を対象にした最終段階の治験を5月から始めたことを明らかにした。
この最終治験は2028年3月まで行う予定で、有効性や安全性が確認できれば、治験が終了してから1年程度で国に承認申請したいとしている。

川崎重工など3社 液化水素運搬船の建造体制構築で協業

川崎重工(神戸本社:神戸市中央区)、今治造船(本社:愛媛県今治市)、ジャパンマリンユナイテッド(本社:横浜市西区)の3社は6月2日、川崎重工が設計・建造する液化水素運搬船の後続船の建造体制構築に向け、共同検討を開始すると発表した。各社が持つ液化水素運搬船建造に必要な設備、人材などのアセットを相互に有効活用する。
液化水素運搬船は、大量の水素を国内に輸送することを可能にし、液化水素サプライチェーンの構築で重要な役割を果たすことが期待されている。

KDDI「スターリンク」活用のドローン運航 年内に実証実験

KDDIは5月29日、年内に米宇宙企業スペースXの衛星通信網「スターリンク」との直接通信を活用して、ドローンを運航する実証実験を行うと発表した。地震など災害時の活用が期待され、2026年3月までの実用化を目指す。
KDDIは10月以降に順次、全国1,000カ所にドローンが離着陸する拠点となる機器を整備する。震災からの復興で包括連携協定を結んでいる石川県から導入を始め、経営に参画しているローソンの店舗や市役所などにドローンを配備する。電線など社会インフラの監視や建設現場の作業確認、災害時の捜索活動などで使用することを想定。スターリンクと直接通信すれば、山間部や離島などでも簡単にドローンを運航できるようになる。

米FDA 富士レビオ系アルツハイマー血液診断キット初承認

米食品医薬品局(FDA)は5月16日、アルツハイマー病を血液で診断する検査キットの販売を初めて承認した。申請したのは、H.U.グループホールディングス傘下の検査薬メーカー、富士レビオ(本社:東京都)の子会社で米国に拠点を置く富士レビオ・ダイアグノスティクス。
今回の承認を受け、富士レビオは6月中の販売を目指す。病気の兆候や症状がある55歳以上が対象。血漿(けっしょう)中の、アミロイドβ(ベータ)など異常なたんぱく質の濃度を測定し、脳内に塊ができているかどうかを判断する。従来の検査法よりも患者の負担を軽減し、病気の早期診断につながることが期待される。

男性ホルモン「テストステロン」にアルツハイマー抑制効果

九州大学などの研究グループは、アルツハイマー型認知症について、男性ホルモン「テストステロン」が脳内の免疫細胞に作用し、発症を抑える効果を持つことが分かったと発表した。研究論文が科学誌「アドバンスド・サイエンス」に掲載された。
グループは老廃物を分解する脳内の免疫細胞「ミクログリア」とテストステロンの関係性に着目。アルツハイマー病患者やマウスから採取した脳組織などを解析した。その結果、テストステロンがミクログリアの分解機能を活性化して、たんぱく質の蓄積を抑え、その働きは女性より男性の方が活発であると結論付けた。
アルツハイマー病は脳でつくられるたんぱく質が分解されず、過剰に蓄積されることで病状が進むとされ、認知症の原因で最も多い。患者の3分の2を女性が占める一方、なぜ男女で発症率に差があるのか分かっていない。

日本製紙 木質由来のCNF使い蓄電部材を開発 脱炭素で

日本製紙(本社:東京都千代田区)は4月22日、木質由来の極細繊維、セルロースナノファイバー(CNF)を使用した蓄電部材を開発したと発表した。レアメタルや有機溶媒を使用しないため、材料の安定調達や製造時の二酸化炭素(CO2)削減に役立つ。
シート状にしたCNFを電極で挟み直接蓄電する。パルプを化学処理することで、従来10ナノメートル(ナノは10億分の1)あった繊維幅を、2〜4ナノメートルほどまで薄くし電気抵抗を減らした。実用化に向けた性能評価を進め、2030年までにウエアラブル端末や小型のIoTセンサーなどへの適用を目指す。