「新技術・新開発」カテゴリーアーカイブ

京大と住友林業 世界初の木造人工衛星「LignoSat」完成

京都大学と住友林業は5月28日、2020年4月より取り組んできた「宇宙木材プロジェクト」で、約4年かけて開発した木造人工衛星(LignoSat)が完成したと発表した。6月4日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)へ引き渡す。
これは1辺が100mm角のキューブサットと呼ばれる超小型の衛星で、NASA/JAXAの数々の厳しい安全審査を無事通過。世界で初めて宇宙での木材活用が公式に認められた。今年9月に米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げ予定のスペースX社のロケットに搭載し、国際宇宙ステーション(ISS)に移送する。ISS到着から約1カ月後に「きぼう」日本実験棟より宇宙空間に放出される予定。

トヨタ 低排気量の小型エンジンを開発 PHV, HVへ搭載想定

トヨタ自動車の佐藤恒治社長は5月28日、燃費効率と小型化を追求した新型エンジンの開発を進めることを明らかにした。開発するのは低排気量の直列4気筒のエンジンで、2種類用意する。プラグインハイブリッド車(PHV)やハイブリッド車(HV)など電動車のモーターとの併用を想定し、高効率化を目指す。

帝人 小児向け伸びる心臓パッチ共同開発 再手術リスク減

帝人(本社:大阪市北区)は5月27日、福井経編興業(所在地:福井市)および大阪医科薬科大学と共同で、先天性心疾患を持つ小児向け心臓パッチ「シンフォリウム」を開発し、6月12日に発売すると発表した。帝人傘下の帝人メディカルテクノロジー(所在地:大阪市)が販売する。価格は104c㎡の製品が37万8,560円。同製品は2023年7月に厚生労働省から製造販売の承認を取得している。この心臓パッチは伸縮することで、成長する小児の心臓の変化に対応し、これまでなら必要だった再手術のリスクを低減できるという。

認知症の原因物質を無毒化する触媒を開発 東大など

東京大学の金井求教授らは、アルツハイマー病の原因物質とされるタンパク質の「アミロイドベータ(Aβ)」を無毒化する触媒を開発した。
一連の流れは次の通りだ。研究チームが開発した化合物「LEV」は、注射で投与すると血管を通じて脳内に届く。体外から分子に光を当てると、アミロイドベータを酸化する反応が生じ、塊状のアミロイドベータがほぐれる。すると、免疫細胞のミクログリアがアミロイドベータを除去する働きを促す仕組み。マウスで効果を確認した。今後、臨床応用を目指す。
これらの成果をまとめた論文を国際科学誌「アドバンスト・サイエンス」に掲載した。

トヨタなど4社 脱炭素燃料30年導入へ共同検討

トヨタ自動車、出光興産、ENEOS、三菱重工業の4社は5月27日、自動車向けの脱炭素(カーボンニュートラル、CN)燃料の導入・普及に向け共同で検討を始めたと発表した。2030年ごろの導入を目指し、量産化の方法や実現に必要な制度などについて検討を進める。
CN燃料は既存のエンジン車にも活用できる可能性があるほか、充電に時間がかかる電気自動車(EV)と違い、給油時間をガソリン車並みにできるメリットがある。

東京海洋大学 ニジマスでサケの卵を繰り返し産卵に成功

東京海洋大学の研究グループは5月24日、ニジマスにサケの細胞を移植することで、サケの卵を繰り返し産卵させることに成功したと発表した。サケの養殖の効率化や品種改良、他魚種への適用を含め資源の保護に役立つ技術と期待される。
サケは数年間、海を回遊した後、生まれた川に戻って、一生に1度の産卵を終えると死んでしまう。これに対し、ニジマスは成熟した後は死ぬまで毎年、産卵し続ける。
グループはキングサーモンなどから精子や卵のもとになる「生殖幹細胞」を取り出して、ふ化したばかりのニジマスに移植。実験施設の水槽で飼育を続けたところ、2年ほどでニジマスは成熟してオスはサケの精子、メスはサケの卵を持つようになり、双方を人工的に授精させるとサケになった。さらにこれらのニジマスはその後も毎年、サケの精子と卵をそれぞれ持つようになり、メスは卵を産み続けた。

e-Mobility Power, 東光高岳 次世代超急速充電器を共同開発 

e-Mobility Power(イーモビリティパワー、本社:東京都港区)と東光高岳(本社:東京都江東区)は5月23日、次世代超急速充電器(一口最大出力350KW)を共同開発することで合意したと発表した。CHAdeMO規格の最大出力350KW/口の急速充電器の開発は世界初の取り組みとなる。10分の充電で400km走行できるとしている。
東光高岳はEV用急速充電器の国内累計販売台数No.1(2024年3月時点で約5,000基)の実績を持つ。イーモビリティパワー、東光高岳の両社は、あらゆる車種のEV、PHEV(プラグインハイブリッド車)ユーザーの需要に応える。

三菱重工, 日本ガイシ クリーン燃料製造の効率化で協業

三菱重工業(本社:東京都千代田区)と日本ガイシ(本社:名古屋市瑞穂区)は5月22日、環境負荷を抑制するクリーン燃料・原料の利用拡大を見据え、需要の拡大が見込まれるバイオエタノールおよびe-メタノールの製造プロセスを低コスト・高効率化する膜分離脱水システムを共同開発すると発表した。燃料メーカー向けに2020年代後半の商用化を目指す。

京大 iPS細胞から精子, 卵子のもと大量作製成功, 医療応用

京都大学高等研究院の斎藤通紀教授らのグループは5月21日、ヒトのiPS細胞から卵子、精子のもとになる細胞を大量につくり出す方法を開発したと発表した。これにより、将来的に不妊治療など医療への応用が期待される。
グループはヒトのiPS細胞から生殖細胞のもとになる細胞をつくり、さらに卵子のもとになる「卵原細胞」に変化させる方法を開発しているが、できる細胞の数が少ないことが課題だった。今回グループは、様々な細胞の分化を助ける働きをする「BMP」というタンパク質を加えて培養したところ、課題だった「卵原細胞」を大量に作製することに成功したという。細胞の数は4カ月の培養期間でおよそ100億倍に増えた。また、同じ方法で精子のもとになる細胞も大量に作製することができたとしている。

ペロブスカイト型太陽電池 官民協議会設立 経産省主導

斎藤健経済産業相は5月21日、次世代型のペロブスカイト太陽電池の導入拡大に向けて、官民で協議会を設立すると発表した。協議会は5月下旬に立ち上げ、導入目標や価格目標を策定する。国内でサプライチェーン(供給網)を構築し、海外市場の獲得も狙う。
協議会にはペロブスカイト太陽電池開発にすでに参入しているメーカーのほか、再生可能エネルギーの導入に積極的な自治体、空港や鉄道などの業界団体などが加わる。