「新技術・新開発」カテゴリーアーカイブ

東北大 iPS細胞による心筋細胞作製の効率的培養法

東北大学の研究グループは3月17日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)が形成した細胞の塊を、硬さの調節が可能なハイドロゲルを挟み込む”サンドウイッチ培養法”を確立したと発表した。この方法を用い、ゲルの硬さを心臓の硬さに近似させると、iPS細胞が中胚葉の細胞に分化しやすくなり、拍動する心筋細胞が効率的に得られた。
今回確立した培養法は、従来のiPS細胞を用いた心筋細胞作製の効率化に役立つ可能性がある。また、硬さ環境に着目したこの培養法は、iPS細胞から様々な組織や器官(培養臓器)を作製するために適した硬さ環境や、その分子機構を明らかにするツールとして活用されることが期待される。
この研究成果は3月5日に、高分子科学専門誌Macromolecular Biosciencelに掲載された。

パナソニック セルロースファイバー70%樹脂開発

パナソニックプロダクションエンジニアリングは3月16日、パナソニックホールディングスマニュファクチャリングイノベーション本部で開発した、植物由来のセルロースファイバーを70%の高濃度で樹脂と複合した成形材料「kinari」のサンプル販売を2023年4月より開始すると発表した。
パナソニックグループでは2015年より石油由来樹脂の使用量削減による環境負荷低減を目指し、天然由来のセルロースファイバーを活用した材料開発を進めてきた。その結果、2022年12月よりセルロースファイバーを55%複合した成形材料(「kibari55-pp」)の量産販売を開始。
そして今回、セルロースファイバーを70%の高濃度で樹脂(ポリプロピレン)に混ぜ込んだ成形材料「kinari 70」を4月よりサンプル販売を開始することになった。

エーザイ「レカネマブ」米FDA フル承認申請を受理

エーザイ(本社:東京都文京区)は3月6日、米バイオジェンと開発を進めているアルツハイマー病「レカネマブ」について、米食品医薬品局(FDA)が、フル承認に向けた変更申請を受理したと発表した。優先審査に指定されており、審査終了日は7月6日を予定する。フル承認が決まれば、治療薬が本格的に普及する段階に入る。
エーザイは日本や欧州などでも承認を申請している。レカネマブは早期アルツハイマー病患者を対象とし、症状の悪化を27%抑制する効果があるという。

WIPO 22年の国際特許出願0.3%増 中国4年連続首位

世界知的所有権機関(WIPO)のまとめによると、2022年の特許の国際出願件数は前年比0.3%増の27万8,100件と過去最高を更新した。
国別では首位の中国が0.6%増の7万15件に上り、初めて7万件を突破し、2019年から4年連続で首位となった。2位は米国で0.6%減の5万9,056件、3位は日本で0.1%増の5万345件だった。アジア地域からの出願が全体の55%に達し、韓国、インドなどアジア勢の伸びが目立った。

日本ハム 魚を使わないシーフード,フィッシュフライ

日本ハム(本社:大阪市北区)は3月1日、肉を使わずに肉の旨みを再現した「ナミュート」シリーズから、新たに魚を使わずに魚のような風味とほぐれ感を再現した「ナミュート フィッシュフライ」を同日発売すると発表した。内容量104gで参考小売価格345円(税込み)。
これは代替たんぱくの開発技術を活かし、約1年かけて開発した代替シーフード。魚肉に近い食感(ほぐれ感)や風味を、大豆や海藻由来成分などで再現した。

キーサイト NTT・KDDIと次世代6G無線通信で協業

キーサイト・テクノロジーズ・インク(所在地:米国カリフォルニア州)、NTTとKDDIの3社は3月2日、次世代の6G無線通信で協業すると発表した。6Gに必要なイノベーションの推進が期待される主要技術の開発を進める。
通信回線からサーバーや半導体の内部まで、光で信号を伝える超省エネルギーの通信網の基盤技術を共同で開発する。まずサブテラヘルツ(Sub-Thz)周波数の新しいスペクトラム技術分野から協業を開始する。2024年中に基本的な技術を確立し、2030年以降にデータセンターを含む情報通信網の消費電力を100分の1に低減することを目指す。

ラピダス 北海道千歳市に最先端半導体新工場建設へ

トヨタ自動車、ソニーグループ、NTTなど8社が共同出資し、最先端半導体の国内生産を目指しているラピダス(本社:東京都千代田区)の小池淳義社長は2月28日、北海道庁を訪問、鈴木直道知事と面会し、千歳市の工業団地に量産拠点となる世界最高水準の新工場を建設することを決めたと伝えた。
同団地は新千歳空港に近く、近隣にはデンソーをはじめ自動車関連の産業集積、部品製造会社などが数多く進出しているほか、水資源にも恵まれている半導体産業にとって極めて良好な立地環境と判断した。
ラピダスはベルギーの国際的な研究機関、imec(アイメック)や米IBMとも提携。工場や研究拠点の整備を進める方針を示しているほか、国からも当初の設備整備として700億円の補助を受け、最終的に同プロジェクトに国は3,000億円筒度を投資する。今後量産に向けて5兆円規模の投資が必要になるとみられる。ラピダスは「2ナノ」と呼ばれる最先端の演算用半導体の量産を掲げている。

荏原 世界初の液体水素昇圧ポンプの開発に成功

荏原製作所(本社:東京都大田区)は2月24日、世界初の水素発電向け液体水素昇圧ポンプの開発に成功したと発表した。同社は2019年より、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として、水素発電ガスタービンへの水素供給に必要となる、世界初の水素発電向け「液体水素昇圧ポンプ」の開発を進めていた。
2022年10月、JAXA(宇宙航空研究開発機構)能代ロケット実験場(所在地:秋田県)にて液体水素による実液試験(−253℃)を実施し、大流量昇圧ポンプの設計に資する良好な試験結果を得た。このため、世界初の液体水素燃料供給用のポンプとして、2023年に市場投入を予定している。

大阪万博「空飛ぶクルマ」運営5社決定 ANAなど

大阪・関西万博での運航を目指す「空飛ぶクルマ(eVTOL)」の運営事業者に5社が2月21日決まった。ANAホールディングス、日本航空(JAL)、トヨタ自動車出資の米新興企業、ジョビー・アビエーション(所在地:米国・カリフォルニア州)、空飛ぶクルマを開発するスカイドライブ(所在地:愛知県豊田市)、丸紅の5社。
ANAはジョビー・アビエーションと連携、JALはドイツのボロコプターの機体、丸紅は英国のバーティカルエアロスペースの機体でそれぞれ運航する予定。また、万博会場となる大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)の離着陸場運営はオリックスが担う。
万博会場を拠点に国内初の商用飛行を目指し、国土交通省は関連する制度を2023年度末までに定める。

大阪大 iPS細胞で膝関節の軟骨 サルで移植に成功

大阪大学の妻木範行教授らのチームが、カニクイザルのiPS細胞(人工多能性幹細胞)からつくった軟骨組織を別のカニクイザルの膝関節に移植することに成功した。2月20日、科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。
チームによると、4カ月後も組織が定着、免疫による拒絶反応も確認されなかったという。通常は免疫による拒絶反応で移植組織は排除される。今回移植した軟骨組織は、コラーゲン状の物質などで覆われていた構造のため、免疫による攻撃を回避できたとみられるとしている。