米国とイスラエルによるイラン攻撃、そしてイランによる報復攻撃で戦火が湾岸の周辺諸国へ拡大している。軍事施設だけではない。民間人が往来する様々な施設も戦禍に巻き込まれる可能性が大きくなっている。そこで、まず早急に検討されなければいけないのが同地域に居住する邦人の退避・退去だ。
米国務省は3月2日、中東地域の15カ国・地域に滞在する米国民に直ちに退避するよう勧告した。イランによる報復攻撃に備えるものだ。イランによるドローン(無人機)攻撃を受けてサウジアラビアとクウェートの2つの米大使館はすでに閉鎖された。
米国務省の中東地域に滞在する米国民への退避勧告は、トランプ政権が予定する大規模攻撃を始める前の差し迫った警告の可能性がある。
日本政府も、これに呼応して在留邦人の早期退避・退去を促すべきではないのか。海外在留邦人調査統計によると、2025年10月現在、中東地域における在留邦人数はアラブ首長国連邦(UAE)5,300人、イスラエル1,010人、イラク99人、オマーン97人、カタール702人、クウェート142人、サウジアラビア718人、バーレーン188人、ヨルダン212人、トルコ1,754人で、このほかイランに約200人がいる。
現地の邦人居住者は不安な毎日を過ごしていることだろう。爆撃の激化で退避ルートがなくなってからでは遅い。犠牲者が出てからでは取り返しがつかない。
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出口戦略不鮮明 イランの体制転換困難?
米国とイスラエルによるイラン攻撃による戦火は、アラブ湾岸諸国への報復攻撃で広がりをみせている中、イラン戦争の先行き、決着点がほとんど見えなくなってきた。
今回の軍事作戦の目標は、イランの①核開発、ミサイル開発の阻止②体制の転換、親米政権の樹立ーーなどが指摘されていた。このうち、トランプ米大統領が空爆初日に敢行したハメネイ師の爆殺後、今回の有力な攻撃目標の一つとして挙げていたイスラム宗教者を国の最高指導者に置く、イランにおける「イスラム体制の転換」を全く口にしなくなったからだ。これは当初、意図していた体制の転換が、イランにおける政治のあり方や官僚体制のあり方から極めて困難と判断したとみられ、にわかに出口戦略が不鮮明になったのだ。
とはいえトランプ氏は3月2日、ホワイトハウスでメディアを前に、イランでの軍事作戦について「4〜5週間を予測していたが、すべての目標が達成されるまで期限を設けず、継続する」姿勢を強調した。そして、「これから”大きな波(大規模作戦)”がくる」と攻撃の強化・拡大方針を明らかにした。
しかし、鮮やかな作戦のもと成功したベネズエラのマドゥロ大統領捕縛作戦とは違い、イランはハメネイ師殺害計画こそ成功したものの、イスラム社会の事情、イラン国民の心情は複雑で、目標の一つでもある、”親米政権誕生”の絵は容易に描けない。そこで不本意ながら、長期戦を覚悟しなければ…との思いが去来するのか?
11月の中間選挙を有利に運ぶために、米国におけるトランプ相互関税の還付、後手に回る物価高対策など内政不人気から国民の目を反らせるため、格好の材料としてイラン攻撃に取り組んだはずだった。
だが、この特別作戦、事前に議会などに全く諮っておらず、トランプ氏が独断専行したもの。したがって、米国では圧倒的に「支持しない」とする人が多い。その意味では、政権の人気を落とす結果となっている。
戦況も順調と強調しているが、当初の思惑通りには運べていないもようだ。イランの出方により変わってくるだろうが、トランプ氏はイラン戦争の実りある決着点を、果たして見出だせるのか?